ファッションに疎いイケメンの衣装選び奮闘記。

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今年の5月から、僕自身の音楽活動を再開することにした。
具体的にライブの本数が増えてくるのは6月ごろになろうと思われるが、昨年末の活動休止宣言から半年間で得た数々の気付きや悟りを持ち寄り、板の上に帰ってくる所存である。

「あれ、お前、ライブしてなかった?」

と言われるかもしれない。
確かに、出演のお誘いをいただいた企画や、以前から続けさせて頂いていたマンスリーライブなどに関しては、継続して演奏させていただいていた。
しかし、自分で段取りを組み、準備を整え、挑んでかかる企画や戦略というのは、ただの一度も組んではいなかったんである。
そういう訳で5月6月からの音楽生活に向け、早くも準備をし始めた僕が最初に手を出したのが、僕自身を美しく装飾することであった。

もはや口にするのも馬鹿馬鹿しいほどの常識であるが、僕は実にクールなイケメンである。
そこに居るだけで世界が明るく照らされると評判のこの僕が、さらに自分自身を輝かせるために努力を重ねるというのだ。
白鳥のバタ足的努力とでも申しましょうか、それは実に健気なサービス精神に基づいた、美的感覚の表れなんである。

僕はまずヘアサロンに行き、伸びに伸びた髪をバッサリとカットしてもらった。
ハサミを握ってくれたサロンのオーナーに「どないしましょ」と聞かれたので、

「満員電車に乗っていてね、次の駅でドアが開いたと。で、これから人が入ってくるんだけど、あ、コイツだったらまあギュウギュウに押し込んできても、いいかな、と思わせてあげられるような髪型にしてください。」

と答えた。
自分自身の好みよりも、周辺の人がどのような気持ちになるのかを考えた、実に深い愛に基づくオーダーである。
オーナーに理解してもらうために約10分ほどの説明時間を要したが、これで清潔感のあるイケメンになれるのだから、安いものだ。

清潔感を手に入れた僕が次に向かったのは、洋服店であった。

実は僕は元々ファッションに疎い。
そういうのが好きな友人は何人も居たが、誰に「どんなのを着たらいいと思う?」と聞いても、「自分が着たいものを着ればいいよ」という答えが返ってくるだけであったのだ。
僕はその返答に、実に憤慨していた。

どうしてファッションが得意な彼らは、それを着ているだけで美女あるいは美少女が集まり、くんずほぐれつ酒池肉林の破廉恥畑が出来上がるような奇跡の着こなしを教えてくれないのか。
彼ら自身がそのような状況になっているところを見たことがないから、即効果が出るかどうかという点に関しては、まあある程度妥協しよう。
しかし、彼らの理論と、このクールなイケメンの実力を持ってすれば、渋谷のセンター街がパニックに陥る程度のムーヴメントは起こせるのではないか。
そういった可能性を考慮せず、言葉を尽くさぬ友人たちに、僕は実に絶望したものだった。

教わることができないのなら、自分で学ぶしかない。
クールなイケメンは努力を惜しまないのだ。

僕はまず、ファッションそのものよりも、人に注目をすることにした。
問題は誰に注目をするのか、という点であったが、それに関しては僕自身の直感を信じることにした。

僕が憧れた男といえば、サザンオールスターズの桑田佳祐氏である。
ライブなどではTシャツに短パンというスタイルの氏ではあるが、ソロ活動などの際にはシャツやジャケットをビシッと着こなし、実にダンディで清潔感にあふれた様相を呈している。
特に僕が素敵と感じたのは、以下のフッションである。

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そう、爽やか系シャツマンである。
個人的にはこのような

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ダーティでダンディな雰囲気が好きなのだが、そこは僕自身の楽曲の雰囲気などとのバランスを考えた結果である。
ミュージシャンがダーティでダンディな服を着るためには、ダーティでダンディな曲とメッセージが必要だ。
残念ながら清らかな心と美しい声をを持つ僕からは、ダーティでダンディな曲やメッセージは、今の所出てこないんである。

そういう訳で、大阪のグランフロントを歩き回り、地元のイオンの専門店街を歩き回り、買ってきたのがこのようなシャツだ。

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言い訳させてほしい。
先ほど記載した桑田さんのブルーのシャツは、実にシルキーで美しく輝いていることが分かるだろう。
似たようなシャツを見つけたのだが、それは平気で1万円を越える価格帯であったのだ。

それ以下の価格帯のシャツは、まるで輝いていない。
宝石やラメなどもそうなのだが、「輝き」というのは、実は想像以上に大切なことなのだ。
今までもこの「輝き」を見落としていたがために、一体何枚のシャツを買い捨ててきただろうか。

それならば、「シャツ」+「タイ」+「ベスト」というスタイルを学び、手の出せる価格帯の中で、「輝き」をまとったアイテムを選べば良いのではないか。
そう判断して購入したのが、写真左手のデザインシャツとタイであった。

逆境の中にあって活路を見出したこの判断は、クールなイケメンという触れ込みに対する期待を軽快に飛び越えてゆく、実に実践的で活動的なものであったと自負している。
一点、僕が負けたといえるのは、ベストが一着も見つからなかったということであった。

いや、実際は、見つかったんである。
しかし、どいつもこいつも1万6千円とか3万円とか、その布面積に対して一切の納得の余地のない価格帯であったのだ。

「何お前その布の量でお前ホンマお前」

イケメンも思わず愚痴をこぼしてしまう。
まあ実際は洋服の価格などは青天井であるから、この程度の価格でブーブー言うのは筋違いなんである。
そんなことはハナから分かっている。

問題は、今の予算との兼ね合いなんである。
当方としても、札束を用意できている訳ではない。
限られた予算の中で最上のものを用意しなければならないのだ。
僕は泣く泣くベストを諦め、今後の出会いに期待する決断を下した。

そういう訳で、これからも少しずつ衣装を揃えてゆくようにする。
高価なものではなく、「輝き」の有無を基準とする。
そして、色々と揺れ動いてきたが、やはり僕はシャツ・ジャケットスタイルが好きだから、その辺りを少しずつ探求していけたら、と思う。