ブラジャーとウンティーヌ

沈黙は金なりと言うが、
誰かの言葉によって僕は今日を生きているのだから、
やはり沈黙するだけではいけないのではないか。

そんなことを思い、仕事もそこそこに筆を取った。

ブログの更新が滞っているというか、
もはやそもそも更新しなくてもいいとさえ思っているというか、
だけど毎月いくらかのお金を払って維持しているサーバーだから、
少しはね、という俗感にも駆られてというか、

少なくともそれほど健全ではない理由でもって、
僕は改めてブログを書こうと思うのだ。



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就寝前に布団の中でAmazonの商品ページをフラフラとさまよっていたら、
「仕事のできる男のデスクは美しい。」
という感じのタイトルの本が出てきた。

TOYOTAの動作経済という考え方があるが、

(物を取る動作を、いかに短縮化てきるか、的なアレ。
 ペンは利き腕の側に、電話は左手側に、みたいな
 アレだったと思う。だぶん。)

あらゆる物事に理由を見いだし、
それらを納得して使用するというのは、
洗練されたアーバン的ムード漂う美しさにつながる。

僕くらいの洗練されたアーバン的ムード漂う大人ともなると、
デスクのひとつやふたつ、
それはもう摩天楼のように美しく輝いていてもおかしくない。

普段あまりに自然に使っているものだから自覚していなかったが、
あまりに自然に使えてしまっているあたり、
んもうアーバン的なムードでいっぱいではないか。

それについても自覚はなかったが、
おそらく僕のデスクは近付けばアーバンなジャズが流れてくるような、
トランペットの先っぽが上向きに曲がってるくらいがカッチョイイ的な、
そんなデスクであるのだ。

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ふふんと得意になって翌日、
僕はコーヒーを入れてデスクに向かった。
妻のブラジャーが置かれていた。

おそらく、夕べ洗濯物を取り込む時、
何かの拍子に落ちたのだろう。
ジャズではなく、ドリフの大爆笑のテーマソングが
流れてきている気がする。
ズンチャカスチャッチャラー。

眉間にシワを寄せて椅子を引くと、立派な二つ折りのウンティーヌが、
それはもうてらてらとして、それでいて無遠慮に鎮座していた。

ふと隣りを見ると、
少し離れたところで半蔵(チワワ/オス/最近死ぬほど毛が抜ける)が、
少し離れているのに音が聞こえるくらいの勢いで震えている。

彼なりに何か、言いたいことがあったのだろう。
残念ながらそれを察してやることは僕にはできないが、
ウンティーヌを配置する以外に、何か方法はなかったのだろうか。

僕はウンティーヌを回収してトイレに流し、
震える半蔵を妻のブラジャーで優しく包むと、
ようやくPCに向かって腰を下ろした。

少し冷めてしまったコーヒーを手に取る。
重ねていた書類と、その上に置いていた筆記用具が、
ばさばさと埃を立てて滑り落ちていった。

リラックスを求めて豆の香りを吸い上げると、
先ほどまで直下で圧倒的な存在を放っていた
半蔵のウンチョスの残り香が、僕の胸をいっぱいに満たした。