人生を変えたい紳士の失敗

ジムに通い始めて2ヶ月ほど経つが、一向に効果が現れない。
本来であれば、1ヶ月も経てば体がブルースリーのようになり、2ヶ月経つ頃には顔が若い頃の織田裕二のようになっている予定であったのだ。
それが実際のところは、腹の肉は落ちないし、顔も最近の織田裕二のままだ。
この分では3ヶ月時点で妻がキレイ好きで従順で尽くすタイプの石原さとみになっている予定も守られないだろう。
会費を返してほしい。

人生を変えることは難しい。
そもそも人生を変えたいと思っている者は、「変わる」ということがどういうことなのか分かっていないことがほとんどだ。
その点僕は「人生」がどういうものなのかもよく分かっていないから、いよいよ八方塞がりである。
一縷の望みを掛けてジムに通い始めたものの、人生の好転は実感できず、持ち上がるバーベルの重量が上がるばかりだ。
挙げ句の果てに体重まで一緒に上がりはじめる始末で、もう何がなんだか分からない。

何も筋トレだけで人生を変えようとした訳ではない。
「これさえあれば人生思いのまま」といった何かを求めることこそ、人生に対する大いなる手抜きと言えるだろう。
そのため、僕はジムへの入会と同じようなタイミングで、時間管理とマネー管理を始めた。
いずれもこれまでの人生の中で、無意識に向き合うことを避けてきたことばかりである。
ここまでのことをしたのだから人生などあっという間に変わるだろうと期待していたが、どれだけ時間管理をして効率化を試みても1日は36時間にならないし、どれだけマネー管理をして支出を抑えてもも大富豪の娘(美少女)に言い寄られる気配はない。
挙げ句の果てに「使う金が減ったなら収入も最適化すべき」という暴論で小遣いを減らされる始末で、すいませんどなたか助けてください。

もはや人生を変えることなど不可能に思える。
どれだけ足掻いてみても、世界がその姿を変えることはない。
筋力が付き、仕事が早くなり、無駄遣いが減っても、僕の人生が僕以外の人生になることは絶対にない。
せめて妻だけでも石原さとみに変わってくれないかと思い、自宅のソファから網戸越しの空を見上げてみたが、神の怒りに触れる気がして、すぐにうつむいた。

うつむいたら、はんちゃん(チワワ、オス、8さい、おしっこはギリギリまでガマンするタイプ)と目が合った。
なんだか、色々とどうでもよくなった。