読書法迷子だった僕がやっと見つけた読書のスタイル

暇さえあれば本を読んでいる。本によって読み方が違うので、20分で読み終わる本もあれば、2〜3日かけて読む本もある。

この「本によって読み方が違う」というところに到達するまで、ひどく時間がかかった。考えてみれば当たり前のことなのだけど、当たり前と納得するためには、沢山の実験が必要だった。

いや正直に申し上げて、まだ手探な部分は大きい。とはいえ数年間本の読み方について、まさしく本から学び続けてきて、ひとつのスタイルを見つけた気になっている今の段階で、自分なりの読書の技法を整理しておきたい。

願わくば、僕と同じように本の読み方について悩み続けている人の助けになると嬉しい。

読書法は複数使いこなせばいい

世の中には読書法なんてものがいくつもある。本の読み方を取り扱う本がたくさんある。ギャグみたいだけど、マジで。

フォトリーディングや、マインドマップ読書術、瞬読やパラパラ読みに、音読、つまみ読み。写経も、超丁寧な読書だよね。

どの読書法のマニュアルを読んでも、紹介している読書法がこの世で一番素晴らしい、というトーンで語られている。で、読むと確かにその気になる。

でも実際に読書の現場に戻ると、違和感がすごい。

西尾維新の化物語シリーズをフォトリーディングで読んだ時の物足りなさ。どこかのコンサルタントが書いたビジネス書を熟読する時の退屈さ。

それぞれに苦痛で、読書が嫌になるという、本末転倒のお手本みたいな現象が何度も起こった。

笑っちゃうような失敗を積み上げた果てにようやく気付いたのが、読書には目的があったということ。そして目的ごとに合う読み方が違うということだった。

ここからは、僕が普段よく使っている読書法ごとに、どんな目的の読書に向いているかを、できるだけシンプルに書いていきます。

熟読がいいケース

一言一句をじっくりと味わうように読む読書法を、熟読という。ことにする。

熟読では、文字が伝えようとしてくれている中身に対してフォーカスを合わせる。物語なら物語に。考え方なら考え方に。

文字という媒体を使って、著者が伝えようとしているコンテンツの中身を味わったり、深く胸に刻みつけるように読む。好きな作家の小説を読む時はたいてい全編熟読である。

分子生物学者の福岡伸一先生が大好きで、『動的平衡』や『生物と無生物のあいだ』を何度も読んでいるのだけど、本当は複数回読みでいいはずなのに、文体が素敵過ぎて気がつくと熟読してしまってるの、毎回くやしい。

つまみ読みがいいケース

本の中にある情報の一部だけが欲しい時には、つまみ読みが役立つ。

例えばビジネス書などの場合、同じ領域を扱う本では、内容が被っているところも多い。そういう時は、目次を読んで興味を惹かれる項目に当たりをつけ、その項だけをつまんで読む。

また、意味を深く考えずになんとなく視界に文字を流し込む流し読みをしながら、気になった単語や文節を拾い上げる、というつまみ方もある。

つまんだ項目が素晴らしかった場合、その項目だけで熟読をする、ということもある。特に慣れ親しんだ領域の最新情報を追いかけるような、例えばビジネスの勉強のための読書では、つまみ読みを使いこなせると、一冊当たりの読書時間が大幅に削減できる。

最近ホリエモンの本をよく読むのだけど、彼の本は基本的にはどれも同じことが書かれているので、その本独自のポイントを押さえることになる。するとだいたい一冊、5〜15分くらいで読み終わる。

ちなみに、まだ理解の薄い領域の本をつまみ読みしようとすると、全編つまみ上げることになる。やろうとしていることと実際の行動がズレるとモチベーションが下がるので、そういう時は複数回読みか熟読がおすすめです。

複数回読みがいいケース

まだ慣れ親しんでいない領域や、取り扱う情報の範囲が広い本を読む時、本の内容を広くブレインストレージにダウンロード(今後の記事で解説するよ)したい時は、複数回読みがいい。

最近カルロ・ロヴェリさんというイタリアの論理物理学者が書いた『時間は存在しない』という本を読んだのだけど、あまりに畑違い過ぎて理解できないところが山ほどあった。

ただ内容があまりに興味深いので、まもなく2周目に突入する。面白いもので、今の自分にとって難しすぎる本でも、流し読みでいいから何度も読み返していると、少しずつ内容が理解できてくる。

山口真由さんの『東大首席が教える「超速7回読み」勉強法』という本によると、7回も流し読みすれば、英語の本も何となく意味が分かってくる、ということだが、なんとなく分かる気がする。

僕はあまり速読が上手くないけれど、速読の技法はこの複数回読みと、前項のつまみ読みをする時に助けになる気がします。

対話読みがいいケース

複数回読みをしていると、本の全景が分かっている状態で改めて中身をさらうことになる。

その状態になると、ワンランク上の読書ができる。それがこの対話読みと、次項で紹介する分析読みだ。

ワンランク上などと言ったけれど、実は対話読みを僕たちは小学校の国語の授業で習っている。「この時の著者の気持ちを答えよ」という、アレである。

対話読みは、コンテンツよりも著者自身の思考や価値観に迫りたい時に便利だ。何か気になる表現や内容を見つけた時、「どうしてこんなことを書いたの?」と著者に問いかけながら読み進めてみるのだ。

同じ著者の本を何度も読んだり、何冊も読んだり、その著者の人となりが分かる本以外の情報に多く触れていると、自分の中にその著者のコピー人格が育っていく。ある程度育ってくると、こちらの思考では絶対に出ないであろう答えを返してくれるようになる。

その答えが合ってるかどうかはどうでもいい。そんなことより、ピンとくる答えが聞こえたら、疑わずにポケットに入れて喜ぼう。

ちなみに、特定の著者のコピーが育つと、そのコピーに文章を書かせることもできるようになって超楽しい。二次創作をしている人たちの多くは、無意識でやってるんじゃないかな。

分析読みがいいケース

文章や本そのものの中で、情報がどのように並んでいるのかを確認しながら読む読み方を、分析読みと勝手に読んでいる。間違えた。呼んでいる。

今読んでいる文章がどういう構造で成り立っているのかに注目する読み方で、自分が書く文章の質を上げるためには避けては通れない。

分析読みは、実質的には書くための作業なので、ここではあまり深掘りしない。何かを書きたいけれど、どう書けば分からないという時は、「こんな風に書きたい」というお手本を持ってきて分析読みをしてみよう。

まとめ〜あなたはどうしてその本を読むのか〜

本を読む目的は、もちろん「楽しいから」でいいのだけど、もう一歩踏み込んだ言葉で表現できるといいと思う。

映画やアニメを見るように、物語を堪能したいのか。

興味のある領域での実用的なノウハウを知りたいのか。

人生をより良く生きるヒントが欲しいのか。

広大な世界地平線の、その向こうの景色を見に行きたいのか。

目的が分かれば、手段が選べる。その目的にかなう読書のスタイルを選べたら、僕たちはしみじみと心に響く深い感動も、最短距離を駆け抜ける効率性も、自由自在に手に入れられる。

あなたはどうしてこの記事を読んだのか。その目的は果たされただろうか。それともこれから果たすのだろうか。そのために、この記事をどう読んだのだろうか。

僕には何も分からないけれど、何かの役に立てたらうれしい。