イケメンの休日と大自然の脅威。

今日は私的安息日であった。日々を仕事で埋めることは働いている時は充実しているように感じるが、気が付くと集中力が散漫になっていたり、アイデアが凝り固まってしまうから油断ならない。安息日を多めにとったところで、バチは当たるまい。

そんな今日は愛車ジムニーたんの洗車をした。車好きで整理整頓が苦手な父がたらふく買ってきた洗車アイテムが車庫のあちらこちらで埃まみれでこちらを見ていたが、クールでイケメンで時として雄々しいと評判(セルフアンケートによる)の僕はそんな怪しげなものには目もくれず、スポンジとホースを抱えてこれに取りかかった。

水をたっぷりぶっかけ、黄色いスポンジで優しく撫でてやると、ジムニーたんはその雪よりも白い肌を恥ずかしげもなく露出する。普段道路の上がどれほどに厳しい環境であるのか、実感する瞬間である。

車体の左側からボンネットを荒い、背中を流して右側を洗う。屋根を洗い忘れていたことに気付いてイスを持ち出し汚れを洗い流すと、車体全体に汚れが落ちてきたためまた洗う。出来る男は、手間を惜しまない。

ひとしきりの清掃を終えると、ジムニーたんは見違えるような輝きを放ち始めた。僕は特別車に愛着を持つ方ではないが、さすがに普段乗り回していて色々と世話になっている車が自分の手で美しくなってゆくのは、気持ちの良いものである。

僕は車を乾かすついでに母の実家の化け猫シロちゃんにゴハンをあげるべく、生まれたままの姿となったジムニーたんを颯爽と走らせた。

流れ行く景色が、ジムニーたんの美しいボディを祝福しているようだった。道端を走っていったアライグマも、あら素敵なジムニーね、といった視線を投げてよこしていうように感じる。

いつもは歩いて来ている母の実家に着くと、当然であるのだけど時間が余る。僕はその辺でぺしゃんこになって惰眠を貪っていたシロちゃんを膝に乗せ、縁側に座って本を読んでいた。

穏やかな春の陽射しが少しずつ流れてくる夜の涼しい香りと混ざり合う、優しい時間であった。

本が切りのよいところまで来たら、膝の上のシロちゃんの体温がこちらにも構えと言っていた。僕は本を閉じ、いつのまにか夕方と呼べる色に染まった空を大きく見上げた。その時であった。

黒い影がバサバサッと視界の端を慌ただしく通り抜けたかと思うと、重量感のある液体のようなものが斜め一刀の筋を引き、ジムニーたんの後部窓に直撃、ビタンというトマトを高いところから落としたような音を立てて小さく爆ぜた。

トリノ・ウンティーヌであった。

ジムニーたんが少し、震えたような気がした。

僕は呆然として、もうええわいと膝を離れたシロちゃんを捕まえることも忘れて、ただただ呆然としていた。

人ひとりの努力など、大自然の脅威の前には圧倒的に無力だ。人は常にその中で生かされている。そこはかとなくしょんぼりとしたジムニーたんヘッドライトを見つめながら僕は、そんなことを思った。

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