葛藤カップヌードル。

インスタントラーメンのスープを飲み干すか捨てるか、これが問題である。ご存知の通り、インスタントラーメンのスープには過剰な塩分を筆頭になんだかよく分からないけれど体に悪そうなものがワンサカと入っている。飲み干せば喉は乾き腹は出て体に毒を積むことになる。

しかし、それを分かっていてなおかつ悩む理由がある。美味いんである。

特にズルズルと麺を啜っている時には気付かないのだが、かのスープから上り立つ芳醇な香りは筆舌に尽くし難い。それが最高潮を迎えるのが、スープを捨てる時だ。麺を啜りながら「このスープは体に悪から捨てよう」と誓っても、カップを持って台所に辿り着く頃にはこの食欲をそそる香りに再度気付き、投棄をためらってしまう。

ラーメンスープ「あら、もういいの?」

僕「うん、君は体に悪いからね。」

ラーメンスープ「・・・いいわ、捨ててちょうだい・・・」

僕「泣いて・・・いるのかい?」

ラーメンスープ「いいの・・・どうせ私はラーメンスープ・・・麺の引き立て役だもの」

僕「そんなことはない!君は、充分魅力的だよ」

ラーメンスープ「でも、私は体に悪いのよ?だからあなたも、私を捨てるんでしょ・・・?」

僕「・・・」

ラーメンスープ「もういいのよ。きっと、私は愛されちゃいけないの。そういう定めを背負って生まれてきて・・・キャッ」

僕「ズズズズズ・・・」

ラーメンスープ「もう・・・バカ//////」

こんなことが続くものだから、僕は意を決して、そもそもインスタントラーメンを食べないという生活を選んだ。そうするとどうだ、ラーメンスープの甘美な誘いは全く消えてなくなり、お米と野菜と少しのお肉による健全健康な食生活が始まったのである。

やはり習慣を変えることは重要である。三島由紀夫は習慣のことを化け物だと呼んだが、まさにこの化け物を飼いならすかどうかで人生が左右されると言ってもいい。僕はこの習慣という化け物を、今まさに飼いならし、人生の主導権を握ったのである。

そうやって生活を初めておよそ一週間が経った頃だ。僕は仏壇のご飯を取り替えるために入った仏間で、ある段ボールを見つけた。箱買いされてきたインスタントラーメンであった。

僕「お前・・・」

インスタントラーメン「ぐすっ・・・ごめんなさい・・・でも・・・会いたかったの・・・!」

一週間振りのインスタントラーメンは、実に簡単お手軽で美味しかった。

ns

健康への道のりは遠く険しい。

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