時間とは冷酷なものだ。どれほど望んでも戻ることもないし、起こった出来事は取り返しがつかない。僕たちにできることは、常に「今この瞬間の時間をどう使うか」を吟味し、選択することだけだ。
僕は日常の全てのタスクをデジタルツール(僕の場合はEvernote)で一元管理するGTDという手法と、タスクシュート式時間術の組み合わせで普段の時間の使い方を管理している。
そんなことをしているからといって、1日が28時間になるわけではない。どちらかというと、24時間をできるだけ24時間として使う、という感覚の方が近いかもしれない。
・・・あ、ちょっと待って、息子が泣いてる。ミルクあげなきゃ。じゃ、じゃすたもーめん。
・・・
よし、ええと、何だっけ、、、、そうそう、僕たちは合理だけでは動けないのです。ないのだ。
どれだけ日中の仕事を終わらせてから自分のやりたいことに時間を割こうとしても、「ちょっとだけ」の気持ちでYouTubeを見始めて、気がついたら数時間が経っていた経験は、あなたにもあるだろう。
実は僕たちは24時間を21時間や19時間くらいしか使えていないのかもしれない。そんな時間下手な状態では、仮に1日が28時間になっても、「どうして1日が32時間ないんだろう」なんてことをボヤく日常が待っているに違いないのだ。
時間が増えないかと嘆く前に、まずは今自分が持っている24時間をいかに使い切るかということにフォーカスを・・・
・・・なんか変な臭いが、あ、息子ウンチョスしてああぁぁぁぁぁあああああちょっと漏れてるぅぅぅううううロンパース汚れてるぅぅぅううう待てお前そんなに動くなお前ちょ、ちょっ
・・・
ハァ、ハァ、し、失敬。何の話しだったっけ、ええと、あ、そうそう、時間をね、24時間をちゃんと使おう的なね、ええ。ハァ、ハァ。
YouTubeをね、あの、ダラダラ見ちゃうとか、そういうことを責めたいのではないんですよ。ないのだ。
ネットサーフィンや動画視聴を仮に「悪癖」と呼ぶとしても、「悪癖」にもそれが起こる切実な理由がある。それを無視して「悪癖」を抑え込もうとしても、より強い力で反発されるだけだ。
ならばどうすればいいかというと、「悪癖」の原因となっている「ストレス」と「トリガー」に働きかけるというのがおススメだ。
『やめられなくなる、小さな習慣』(佐々木正悟・著)という習慣にフォーカスを当てた名著があるのだけど、その本の中で佐々木さんはこのように述べている。
カフェインを過剰に摂取しているという自覚があるのにやめられないという人は、コーヒーの香りとストレスがスイッチになってしまっています。
ストレス状況下 × コーヒーの匂い(刺激) = スイッチ
→ コーヒーを飲む → ストレス解消 = 報酬
というわけです。
出典:やめられなくなる、小さな習慣
つまり、仕事が終わって家に帰ってきた時点でストレスフルな状態だと、ちょっとした刺激がトリガーとなって悪癖が発動する、ということである。
・・・はい、ええと、息子また泣き出したからちょっと行ってきますあれぇぇぇええええミルク吐いてるさっき着替えたとこなのにぃぃぃぃぃいいいもうお前抱っこだ抱っこ。
ねた。薄眼あいてる。え、こわ。
た、度々失敬。何だっけ。
・・・あ、うん、そう、「ストレスを溜めないようにする」か「トリガーをどこかに隠す」っていうのが、「悪癖」解消には便利だよって、そういうことです、はい。
ごほん。まず「ストレスを溜めないようにする」手法は人によって大きく異なるから、これをすれば間違いないというノウハウは存在しない。
だが、かなりの確率で多くの人にとって有効だと思われる方法がある。それが、早起きして朝イチにやりたいこに取り組んでしまうということだ。
時間は30分も取れれば万々歳。5分でも2分でもかまわない。重要なのは、終業後に帰ってきてからも、仕事中も、出勤中にも、「すでに僕は今日やりたいことをやってきたのだ」という達成感と充実感と共に過ごすということである。
既にやりたいことができている。やってみれば分かるが、それだけで帰宅後のストレスは大幅に軽減されるものだ。
もうひとつの「トリガーをどこかに隠す」というのは、もっと簡単だ。家に帰ってきたらスマホに充電器を挿して、その上に本でも置いておけばいい。
友人や家族、恋人とやりとりをする必要があるなら他の工夫が要るけれど、朝既にやりたいことをやれている状態なら、多少スマホを使うことがあっても、いつもの「悪癖」の引力は弱いはずだ。
とはいえ、できれば一度極端にトリガーと距離を取ってみてもらいたい。「中途半端に取り組んで結果が出ない」というのは、その後にかなり良くない影響を残す行動のひとつだからだ。
これまでやっていたことと、全く逆のことを極端にやってみる。そうすることで自分にとって心地のいい「中道」が見えてくる。その「中道」を歩んだ結果として、僕たちは与えられた24時間を24時間として処理できるようになるのだ。
不思議なことに、24時間をきちんと使い切れていると、「1日が30時間ほしい」などという気持ちは湧いてこなくなる。すると「時間が足りない」というストレスの減少が、さらに行動を軽くしてくれるようになる。
このスパイラルに入ることができれば、毎日自分の人生を生きているという実感が得られる。「悪癖」に使っていたエネルギーが「やりたいこと」に使えるようになるから、どんどん加速していくことも実感できるだろう。
あなたの消し去りたい「悪癖」は何だろう。ぜひじっくり自分と対話してみてもらいたい。(目覚めた息子にメガネを奪われながら)