人は時折、「生まれ変わったら何になりたい」という話しをする。
男性諸氏はこの時「美女の自宅の便座」と答えるだろうが、美女の自宅には高い確率で美男子が現れる。
軽薄な判断は来世にも悪影響を及ぼすことになるから注意が必要だ。
このように、人は物事の本質を見誤ると取り返しのつかない失敗を犯す。
「生まれ変わったら何になりたい」という質問が、一体何を意図して投げかけられているのか、どのような状況で投げかけられているのか、誰から投げかけられているのかで、答えはまるで違ってくるのだ。
仮に職場の休憩室などで男性の同僚に「生まれ変わったら何になりたい」と聞かれたとしよう。
この場合、その同僚は高い確率で疲れている。
そんな時は多少真面目な顔をして、
「また、お前の同僚になりたいよ。」
くらいのことを言うべきなのだ。
美女宅の便座になりたいなどと言った次の日に彼がビルから飛び降りたのでは、あまりにも切なすぎる。
それでは、女性の後輩から「先輩は生まれ変わったら何になりたいですか」と聞かれたとしよう。
軽薄なる男性諸氏は若干のトキメキを感じるかもしれないが、勘違も甚だしい。
このケースでは、後輩女子はほぼ100%の確率で実に単純に興味本位に何の裏表もなく額面通りの情報を求めているのだ。
何か立派なことを言っても大した「ふ〜んそうですか」とつまらなそうにされるのがオチだし、調子にのって「君の家の便座になりたい」などと言ってしまったら、最悪の場合社会から追い出されてしまう。
妙な下心など持たず、素直に感じた通りを語れば良い。
思いつかない場合は、「不倫ドラマに出れるような艶っぽい俳優になりたいなあ。」などと言っておけば、とりあえずあと1ヶ月くらいは受けるのではないだろうか。
最も注意すべきなのは、自分の恋人や妻から「生まれ変わったら何になりたい」と聞かれた時だ。
恋人の場合はまだしも、戸籍上夫婦となった女からそういうことを聞かれたら、預かり知らぬところで生命保険への加入手続きが終了していると見て間違いない。
まず敵の手に刃物が握られていないかどうかを確認し、何もなければ徒手空拳に備えて受け身の態勢を取る。
包丁の一本でも握られていたなら、一刻も早く頭を下げ、片っ端から怒られる心当たりの案件を陳謝する他ない。
ここで、「何ビクビクしてんのよ」などと言ってにこやかにされても、油断してはならない。
毎日の食事に何を盛られているか分かったものではないからだ。
生命保険への加入直後の事故では、あまりに不自然である。
1年から2年をかけ、ある程度良好な夫婦関係を装ってから犯行に及ぶ可能性もゼロではないのだ。
かといって、出された料理を食べないというのは、これもまた別件の恐れにより実行不可である。
結婚というのは、男の展望と退路の両方を同時に断つ、実に悪魔的な儀式であると言えよう。
以上のように、「生まれ変わったら何になりたい」という質問ひとつとってみても、常にその質問の真意や本質を見抜こうとする眼力の有無で、男の将来は大きく左右される。
男は自分が軽率だと分かっているのだから、軽率なら軽率なりに、頭を使う必要がある。
ところで、先日彼女様に「生まれ変わったら何になりたい」と聞かれてまだ答えられていないのだけど、未だに何と答えるのがベストなのか、分からずにいる。
何と答えれば、少しでも穏やかに長生きができるだろうか。