ロフトの上に布団を敷いているこの事務所では、朝起きると白い天井が目の前にある。真っすぐ身体を起こすと頭を打つので、いつものように腹這いになってから肘で身体を持ち上げた。
少しの頭痛を感じたのは、昨晩遅くまで事務所の近所にあるDining73というお店で飲んでいたからだ。音楽好きのマスターに随分と気持ちよく色々喋らせて頂いた記憶がある。思い出すと恥ずかしいことを沢山言っているだろうから(恥ずかしくないことを言ったためしがない)ので、思い出さないようにしよう。
Dining73に行ったのは今回が初めてである。元々音楽が出来るお店があるという噂は聞いていたのだが、今まで行かずじまいだったのだ。それが昨日は営業周りができない時間まで夢中になってしまったものだから、この機会にと繰り出した次第だ。
一般にあまりファンのいないアコギインストを愛するマスターと、マスターが途中で読んでくれたギタリスト/ベーシストのタケ君の3人で、実にマニアックなアコギ弾きの変態達について、やれ
「家族を人質に取られているからあれだけのプレイができるのだ」
とか、
「本当にアレがギターなのか疑わしい。ンドゥゲバとかいう特別な楽器である可能性も無視できない。」
などといった話しをした覚えがある。うん、やっぱり恥ずかしい。
人と人との距離は、お互い何度接点を持ったかで来まると言われている。しかしそこは当然人と人であるから、誰とでも仲良く分かり合える訳ではない。そして、誰とでも中違う訳でもない。一度の逢瀬で心から分かり合える同士もいれば、会えば会うほどに印象を悪くする同士もいる。
人生というドラマを背負っているのが人であるなら、星の数ほどいるのも人である。その全てと関わるには、この肉体の使用期間では到底足りない。
だから人は人を好きになってもいいし、嫌悪してもいいし、何とも思わなくてもいいんである。つまり、好きになられてもいいし、嫌われてもいいし、記憶にも残れなくてもいいんである。
好きな人と好きな時に好きなだけ一緒にいてもいい。このことを本当に理解できたら、人のことを賞賛しながらも多くの方と出会い流れてゆくことが楽しくなる。僕らは自由であるのだ。それは意思でもって選択ができるということである。ならば意思で、自分が嬉しいことを選んでいけばいいではないか。
毎日会う好きな人。
たまに会う好きな人。
一度しか会わない好きな人。
大勢の好きな人、楽しい人、自分にエネルギーを生み出させてくれる人が、この世界のどこかで生きているのである。そう思うだけで、生きる希望が持てるというものだ。
そんなことを思いながら匍匐前進、ハシゴに手を掛けた。夕べ掃除ができなかったデスクを見下ろすと、ゴチャゴチャと余計なものがたくさん乗っている。そのデスクの隣りに、もっと余計なものが見えた。
彼女様が、押し入れの奥深くに置いてあったはずの冬用敷き毛布を布団代わりにして、仰向けになって転がっていたのである。何の話しも聞いていなかったので、テロのような訪問である。迅速に、寝ているうちに傷を負わされていないかを確認する。埃も固まると物の怪になるのかと戦慄しつつタオルケットを落としてみると、
「ゔぉぉぉびっくりしだぁぁッ」
と、酔っ払って管をまくオッサンの声のような音がした。この世には問答無用で飛び込んでくる回避不可な逢瀬というものもある。身体を布団に戻しつつ枕を落とすと、
「ゔぉぉぉふざけんなお前ッ」
と、聞き慣れた音がした。とかく、人生は油断ならない。
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