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低くて狭い場所から、広くて高い場所へ
広川幼稚園は、みなと保育所と比べると遊具が大変に充実していた。園舎正面のグラウンドには土管を埋め込んだ土の山と、ロケットのような形をした巨大なジャングルジムがあって、それらが橋で繋がっている。正門を入った左手の桜の木の下には古い消防車が遊び道具として置かれていたし、みんなが中庭とか裏庭とか呼んでいた園舎裏の小さなグラウンドには藤棚の屋根のある大きな砂場と、そこで遊ぶためのスコップやバケツが沢山用意されていた。
ゆうさく少年は主に園舎正面のグラウンドを走り回っていた。自由時間になると他の友だちに負けないスピードで園舎から走り出し、まずは土山の正面の土管に飛び込む。土山の中心は四角い部屋になっていて(ピラミッドのミイラの間のようなものだ。入ったことないけど)、一カ所だけ斜め上に向かって土管が配置されているところがある。その土管を駆け上がると、ロケットジャングルジムに繋がる橋のすぐ隣りに出る。何も考えずに頭を出すと、何も考えずに土管に飛び込んでくる何者かに首から上を吹き飛ばされるので油断ならない。油断ならないが、この狭苦しい空間から広い空の下に頭を出す瞬間がたまらない。「さあいくぞ!」という気分になるのだ。
土管を飛び出したら、そのまま橋を渡ってジャングルジムにしがみつく。ジャングルジムといっても、高さは2階建ての建物くらいあったように思う。ロケットのような造形の中には2つほどのフロアが仕切られている。それぞれのフロアは子どもが4~5人入ればもういっぱいになってしまう程度の広さである。基本的には中に備え付けられた階段を使って昇降を楽しむのだけど、やんちゃ盛りの少年たちの中には、そのロケットジャングルジムの中ではなく、外側を腕力だけで登っていく者もいた。僕とか。
いちばん危ない遊び方をするヤツがいちばんえらい
当然外側なのだから、壁も床もない。手を滑らせると、最悪2階建ての家のベランダ程度の高さから転落することになる。特に保育士さんたちも何も言わなかったけれど、んもうデンジャラスったらないのだけど、そのジャングルジムを外から上れるかどうかということは、当時の園児たちの中では重要なステータスのひとつであったのだ。
ひとり、ただでさえ身軽な少年少女たちの中にあって、それでもなお異常に身軽なヤツがいた。彼は僕の倍ほどのスピードでジャングルジムを上り、僕がしがみつくことしかできないジャングルジムのてっぺんにたって、なんと両手を離してポーズをとるのだ。今思い出しても手足に冷や汗が出てくる。僕も一瞬だけ手を離したことはあるけれど、彼のパフォーマンスには遠く及ばなかった。まるで幼稚園の統治者のようにロケットのてっぺんで両手を広げる彼に、僕はとっても憧れたものだった。子ども、危ねぇ。
右上の、ちょっとピンク色の横棒が、土山とジャングルジムをつないでいる橋。
ジャングルジムは橋の左側で、土山は右側ね。
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