僕の実家にはちょっと広めのガレージがある。昔は車二台が頭を突っ込んでいたその駐車場は冬場にはみかんの選定場となり、じーちゃんや、亡くなったばーちゃんが、せっせとみかんをサイズ別に仕分けていたものだ。
そのガレージ、今でこそまだみかんの選定はするものの、僕や弟達が学生時代に乗っていた自転車や原付バイク、父の洗車グッズなどがしこたま詰め込まれており、大変に雑然とした様相を呈している。しかも最近になって大学院を卒業したブラザーぷぅちゃんの一人暮らし時代の荷物が返ってきたものだから、せいぜい軽トラが車体半分を入れられる程度のスペースしか残されていない。
先日、そんな我が家のガレージの大掃除を決行してきた。ガレージというか、僕は明らかに収納のキャパシティを越えた何らかの何かで溢れ返った我が家の中を少しでも奇麗にするための大掃除を少し前から行っていて、半年作戦で家を磨き上げ、美しい家屋で2015年を迎えようと目論んでいるのである。ガレージは最近足が弱ってきたじーちゃんが良く通る場所なので、率先して手を付けたという訳である。
ガリガリに錆びた一斗缶を引っ張り出し、ドラム缶を転がすと、何に使うのかよくわからない金属のパーツと同じものが大量にある洗車グッズの向こうに、彼は居た。
棚である。見ての通りの手作りだ。制作者は、僕である。
僕は高校生の頃、『いこら』という劇団に入り浸っていた。当初役者として関わり、その後は大道具として参加していたのだ。この棚は、当時劇団で使う道具を作る合間で制作したものである。
正直な話し、別にこういうものが欲しかった訳ではない。頭の中に浮かんだイメージをただただノコギリとカナヅチに込めて木材に当てたところ、こういうものが出来上がったというのが正しい。そう言えば何かゲージツ作品的な雰囲気も感じられるような気がするが、ただの高校生の木工である。
別に何か特別な棚でもないのだが、子供の頃からギミックや仕掛け的なものが大好きだったから、棚の下部にちょっとしたものを仕込んである。
まずここは、今は木や釘が変形して開けられなかったのだけど、マガジンラックになっている。週刊少年ジャンプが二冊ほど入るスペースを測った記憶があるので、それくらいの懐の深さはあるはずである。当時は、ここにエッチな本を隠そうと思っていた。
そしてこのマガジンラック部分は、よいしょっと手前に倒すと背面にポケットが隠してある。中にはちょっとした仕切りがあって、ちょっとしたものを入れておけるようになっているのだ。当時は、ここにエッチなビデオを隠そうと思っていた。
この棚、制作していた当時の公演が終わって息を切らせて自宅に持ち帰ると、結局僕の部屋に入ることなく、このガレージに置き去りになっていたのだ。かれこれ12年前の話しである。
それから紆余曲折一切せず、この棚は12年間に渡ってこのガレージに鎮座し続けていた。雨風に晒されている訳ではないから朽ちるではなく、父の洗車グッズ(どんだけ買い込んだんだ)が少し並べられるくらいで、これといった役割りが与えられるでもなかった。時たまに猫が爪を研いでいるのを見た。
僕はこの棚をみかん畑の段下に運び上げ、そこで静かに朽ちさせることにした。何か物寂しい気持ちが沸いてきた、とか、そういうことは一切無い。ただただ当時の、何も考えずに木っ端にまみれて幸せだったことと、お世話になった人や今では付き合いのなくなった友人達(腐れ縁で残ってるヤツもいる)、ちょうどこの棚を作っているころに振られた恋人のことを思い出したりして、懐かしくなったんである。
モノはモノでしかない。僕が大切に思っているのは棚ではなくて、守られていたあの頃の居心地の良さなんである。そしてそれについては、今現在の方が生きていることを実感しているし、楽しいんである。
だから僕はこの棚を還すのだ。あの頃のことは、思い出せなくていい。今既に思い出せないことだって沢山あるのだ。そして僕が生きているのは、過去でも未来でもなく今なんである。
さらば棚。エッチな本もビデオも入れられることのなかった棚。たぶんエッチな本を入れていたら、マガジンラックの開け閉めでビリッビリになってたんじゃないかな。だって思いっきり飛び出してたんだもの。釘。
Information
山本優作ワンマンライブ〜Stand & Fight〜
■会場
bar yay a ebisu
東京都渋谷区恵比寿1-12-7三恵ビル3階
2014年9月14日(日)
19:00 open
19:30 start
21:30 end
■ゲスト出演
柴田ヒロキ(Vo.Gt)
予約3000円/当日3500円
ご好評につき、ソールドアウト致しました!
ありがとうございます!
※どちらも1ドリンクついてます。
※お客様は15名限定とさせて頂きます。
■ご予約は
accr.mail@gmail.com
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