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ロボは全部ファイバードです
ある日、祖母がどこかのお店のおもちゃ売り場で合体ロボを買ってくれるという夢のようなイベントがあった。弟のちゅわさんとともに山積みになっているロボの箱を見上げると、それはそれは胸が高鳴ったものだった。
僕はファイバードが欲しかった。欲しかったのだけど、積み上げられた箱を見ても、どれがファイバードなのか分からない。僕は「ロボアニメといえばファイバードである。ここにはロボがいっぱいある。よってここにあるロボは全てファイバードである」という三段論法を展開し、6体の小さな電車ロボが合体する的ロボが欲しいと訴えた。
買ってもらったロボは、この流れでお察しの通りファイバードではなかった。トランスフォーマーという現在も続くアメリカ産のロボである。素直にファイバードが欲しいと言えばよかったのかもしれないが、僕は祖母がファイバードなんてナウでヤングなサムシングを知っているはずがないと決め込んでいた。トレンドリーダーたる僕が背中を見せる訳にはいかないという使命感に燃えていたのだった。
ちゅわさんはナントカというでっかいロボを買ってもらっていた。ロボにもなるし、戦艦にもなるし、秘密基地にもなるという、三段変形のトランスフォーマーである。
僕はちゅわさんの選んだロボを見てほくそえんだ。あれは変形機構がよくない。立ててロボ、倒して戦艦、ひっくり返して秘密基地と言い張っているだけの、稚拙なギミックである。子供騙しである。ロボの変形合体機構は複雑であればあるほどいいに決まっているから、奴はじきにあのデカブツに飽きて、僕のロボがいいと騒ぎ始めるに違いない。もしそうなっても、僕は断じて自分のロボをゆずる気はないから、覚悟しておけ。なんて、そんな決意を固めたのだった。
そのロボをよこせ
相手のロボが良いと先に言い出したのは、当たり前のように僕の方だった。なんだ俺のこのちっちェロボは。ちゅわさんの巨大なロボの方が強そうだし、何だったら僕のロボを格納してしまえるコンテナ車なども付いているではないか。ずるい、ずるいぞちゅわさん。他のチビロボが運べるとか、そういうステキな機能は僕にこそふさわしいのだ。ほら見てみろ、お前のロボの方が無駄にデカいから、銃を持たせた腕を水平に構えると、お前のロボが放つ弾丸は僕のロボの遥か頭上を通過するだけだが、僕のロボが放つ弾丸はお前のロボのおティンティンに致命的なダメージを与えてしまえるではないか。そんなロボでは可愛そうだから、僕ちゃんのロボと交換してやる感謝したまえ。・・・的なことを、もう少し雑な言葉と多少の暴力でもってちゅわさんに訴えたが、さもありなん、そんなことでロボの所有権が入れ替わる道理はないのだった。
そんな孫たちの醜い争いを見かねた祖母は、ほどなくしてお互いに買い与えたものと同じロボを、またそれぞれ別々に買ってくれた。僕は実に良い気分だった。「言ってみるもんだな」、と生まれて初めて思ったのは、この時だったと思う。
これこれ、初めて買ってもらったロボ。
へー、シックスライナーって言うのか。
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