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武器職人のこだわり
家ではだいたい学研ニューブロックを使ってロボばかり作っていた僕だけど、たまには武器や鎧を作ることもあったのだ。鎧の方はどうにも面倒臭いのであまり率先して作らなかったかな。多かったのは武器である。
新聞紙をざばあと広げて、適当な角からくるくると巻いていく。すると中の詰まった筒のようなものができる。辺ではなく、角から丸めることが重要だ。そうすれば、巻き終わりも角になる。辺で巻き終わるよりも、角で巻き終わる方が、最終的に出来上がる新聞紙のエクスカリバーを強く引き締められるのだ。
加えて、巻き始める角には、少しツバを付けておくとよい。そうすることで巻き始めに起こる”たゆみ”を最低限に抑えることができる。これもまた、エクスカリバーの引き締めを強化するための工夫である。
とはいえ、むやみやたらに引き締めればいいかというと、そうではない。新聞紙は長方形だから、ひとつの角から巻き始めると、巻き終わりの角が巻き始めの位置とは違う場所にズレるのだが、たいていその位置は中身が空洞になていることが多いのだ。その状態で強引に新聞紙を引き締めると、ロール状の新聞紙が潰れて形が美しくなくなってしまう。仕上がりの美しさを保てるギリギリの強さで新聞紙を引き絞ることが、新聞紙武器職人に求められる重要なスキルであるのだ。
刀狩りのゆうちゃん
ある時、いよいよ小学校で武器職人としての手腕を振るう時が来た。どういう主旨だったかもう忘れたけれど、新聞紙で武器と鎧を作って装着しよう、的なイベントが催されたのである。僕は自宅から2日分の読売新聞を搬入し、満を持してベストな引き締めを与えた新聞紙エクスカリバーを作成。身に纏った新聞紙アーマーには落ち葉を貼り付けるなどして季節感の演出にも勤め、見事な戦士として津木小学校の一年生の教室に降臨したのだった。
クラスメイト達はというと、お察しの通り新聞紙を辺から巻いている。それは悪手である。辺から巻き始めると、紙に引き締めの力を均等に与えることができなくなる。ようは、やわやわで脆くなってしまうのだ。リーチだって短くなる。僕は自慢のエクスカリバーで、クラスメイト達のふにゃふにゃな紙の筒を何本もへし折って回った。さすがに3本目ともなるとこちらの武器もダメージを受けるけれど、そしたらまた作り直せばよい。
それがきっかけとなって、僕はその後しばらく新聞紙エクスカリバー作りに異常な熱意とプライドを抱いた。それは数年後、周りのクラスメイト達や弟達が、既に新聞紙武器に対する興味を失っていることに気付くまで続いた。成功体験による執着が失敗を生み出した、最も古い記憶である。
そうそうこんな感じ。僕はツバは付けなかったけど。その方がカッコイイと思ってたから。
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