コロナ騒動でテレワークの方が大いに増えている。それに伴って、慣れない自宅などでの作業で、仕事効率が下がって困っているという人も多い。
実はテレワークは奥が深い。漫画家やフリーのデザイナーのように、自宅が作業場、というのともちょっと違う。オフィスが持つ、「いつもここで仕事に集中する」という独特の場の力を、「いつでもどこでも働ける」という自分の能力に昇華しなければならない。
企業によっては、コロナ騒動が落ち着いた以降もテレワークを継続して残すことになるだろう。「いつでもどここでも働ける」能力を磨いておくことは、今後とても役に立つと思う。
僕は今の会社で数年間テレワーク的に働いてきた。昨年第一子が産まれるというイベントを挟んで、成長し続ける息子の変化に振り回されながら、「いつでもどこでも働ける」能力を磨いてきた。
ただ家の机にパソコンを広げていればいい、ということではない。ちょっとした工夫とコツをご紹介する。テレワークでもっと良い感じに働きたいねんワシ、という方のご参考になれば幸いデス。
家の認識を「仕事”も”する場所」と改める
あなたにとって家はどういう場所だろう。今の会社で働き始めるまで、僕にとって家は生活をする場所だった。ミュージシャンだったから音楽をつくる場所、でもあったのだけど、その辺のことは書き出すとややこしいから省略します。ズバッ
当時の僕と同じように、家を生活をする場所だと認識しているのなら、ぜひそこに一文付け足してみてもらいたい。つまり家とは「生活をする場所であり、仕事”も“する場所」だということに、認識を改めるのだ。
生活をする時と仕事をする時では、心のモードが随分と違うように思う。仕事をする時に生活の空気をまとっていては、心が仕事のモードにうまく切り替わらない。
ピンとこなくてもいいので、まずは心の中で呟いてみよう。あなたの家は、今から「仕事”も“する場所」だ。
物理的にに働きやすいライトなホームオフィスを作る
「自宅オフィス」や「ホームオフィス」といったキーワードで画像検索をかけると、夢のように素敵な画像がしこたま出てくる。洗練されたモダンでアーバンなものから、ワクワク感が駆り立てられる秘密基地のようなものまで色々だ。んもう、何時間でも見ていられちゃう。
だけど、少なくともここ最近に、しかも期間限定でスタートを切ったテレワーカーは、ああいう素敵すぎるホームオフィスを導入しようとしてはいけない。気持ちは痛いほど分かるけれど、どうかハンケチを噛んで耐えてほしい。
理由はシンプルだ。あなたが今やらなければならないのは、ホームオフィス作りではなく仕事のはずだ。だからまずはうっとりするような素敵なホームオフィスではなく、最低限仕事が進められるライトなホームオフィスを作ろう。
素敵なホームオフィスは作り上げるために多大な時間と手間とお金が要る。あれらは平日の少しの時間とオフの日を活用して、数年がかりでコツコツと作り上げていく趣味の領域なのだ。つまり、仕事ではないということだ。
僕はあなたの仕事を知らない。けれど、鋭い輝きを放つピアノブラックカラーのサイドチェストや、開放感のある素敵な書斎がなくても、あなたの仕事は進められるはずだ。
人によっては、PCとマウスがあればそれでいい、という規模で収まるだろう。僕の場合はiPadや資料となる本を積み上げておくスペースも必要だが、それだけのことだ。
机上に、自分の仕事道具が置きっぱなしにできる面積を確保しよう。それが僕たちのホームオフィスだ。まずはそこで、仕事をしよう。
外部にサテライトオフィスをいくつか持っておく
オフィスという仕事をすることに特化した空間に慣れていると、どうしても家という環境は退屈すぎると感じる。家族と住んでいる人だと、気持ちよく集中できるようになってきたら余計な邪魔が入るのが辛いこともあるだろう。
だからぜひ、家の外にもオフィスを持っておくことをお勧めする。例えば近所のカフェや、イートインのあるコンビニなどだ。PCが使える図書館の自習室もいい。僕は最近、家から自転車で10分ほどの場所にある、コインランドリーに併設されたカフェがお気に入りだ。使い物になる通信速度のフリーWi-Fiが飛んでいるし、乾いた洗濯物の香りが心地いい。
外部にそういったサテライトオフィスを持っておくメリットは、ほどよい雑音がありながら、周りの人間が干渉をしてこないことだ。現場までの移動中に仕事のことを考えたり、あるいは全く別のこと(ウォーキングをする、音楽を聴くなど)をすることで、気分を切り替えられるのもいい。
また、複数のサテライトオフィスがあれば、仕事の調子が悪い時や、集中力が切れた時に、移動を挟むこともできる。電源のあるカフェやファストフード店を探したりしているうちに、街が自分の庭のように感じられるようになる。中々にいい気分なので、ぜひ体験してみてほしい。
朝はちょっと手間をかけて“出勤”する
家は仕事“も”する場所だと認識を改めた。机の上にパソコンを広げられる場所も確保した。後は好きな時に座ってキーボードを叩けばいいと思っていたけれど、そうではなかった。どうしても集中できないというか、冒頭でお話しした心のモードがうまく切り替えられなかったのだ。
色々試してみた結果、朝時間を取ってホームオフィスに“出勤”すると、その後一日働くモードで過ごすことができるようになった。
出勤とはつまり、本当に会社に行く時と同じ身支度をするという意味だ。服を着替え、髭を剃り、髪をセットする。襟のあるシャツを着て、気合いを入れたい時はネクタイも締める。普段スーツで仕事をしている人は、スーツに着替えればいい。パワフルなスイッチになるだろう。
ちなみに僕の場合は、身支度を始める前に朝の家事を一通りやっつけてしまうことが、仕事モードに向けたいい助走になっている。具体的には、息子の朝食を済ませて、トイレを磨き、洗い物を済ませる。
朝8時には作業を始めたいから、それに向かってせっせと丁寧に動く。締め切り感覚と、軽い運動による血流の増進で、どんどん脳が目覚める。いいことしか起こっていない。テレワークならではの幸せなシステムが作れたと自負している。えっへん。
家族との調和を取り続ける
最後に持ってきたけれど、これが一番大事。
僕のように家族と一緒に暮らしている者にとって、家は自分だけの空間ではない。わが家の場合は妻と1歳になったばかりの息子、チワワが2頭いる。彼女たちにとっても、家は生活時間の大半を過ごす大切な場所なのだ。
全時代的な価値観だと、つい「仕事をしているのだから邪魔をするな」的な気分になりがちだが、それはおかしい。そもそも生活空間に仕事を持ち込んだのはこちら側なのだ。共通の財産の一部を使わせていただくのだから、ぜひ謙虚に振る舞いたい。
これに関しては相手のあることだから、「こうすればいい」というフォーマットを示すのは難しい。強いていうなら、家族が仲良くいるにはどうすればいいか、とか、家族にとって居心地のいい自分・一緒に居て嬉しいと感じる自分はどんなだろうとか、そんなことを常に自分に問い掛け続けるしかない。
息子が産まれるという大イベントを含めたこの数年間の試行錯誤の結果、わが家では
・お互いの睡眠時間を守り合う
・お互いの自由時間を守り合う
・相手が苦手なことは引き受ける
・相手の楽しいことを応援する
・「ありがとう」と「ごめん」をちゃんと言う
・寝る前にちょっとイチャイチャする
が採用されている。妻との間の静かなルールだ。これらのルールをベースに、今は何をすべきかを考える。あるいは、何をしたらいいのか確認を取り合うようにしている。
もちろん毎回上手くいくわけではないが、少なくともお互いがお互いとの生活をより良いものにしようとしているという意図は、伝え合う努力をしている。黙ってたら分かんないもんね。
あ、あと、家事も育児もします。当たり前に。それらは僕と妻の共通のタスクだから。
その中で得意なものを引き受けたり、苦手なものを引き受けてもらったり、その時のスケジュールや体調で調整をしたりする。最初はお互い苦労したけれど、最近はチームプレイでスポーツをしている感じで、楽しくなってきてます。
まとめ
冒頭でお話ししたように、テレワークとは「いつでもどこでも働ける」を実践する仕事のスタイルだ。そのために今回の記事では、どうすればオフィスが作ってくれている働きやすい気分や環境を、自分で生み出すことができるかについて解説してみた。僕は在宅で仕事をしているから、家での働き方の話題がほとんどになったけれど、どうだったろうか。
色々書いたけれど、結局どんなホームオフィスを作っても、どんな工夫をしてみても、家族と調和の取れた関係が築けていないと、お互いに苦痛な時間が増えるだけだ。実際に夫が家にいるのが鬱陶しいという主婦の声は、わんさか聞こえてくる。
一緒にいて心地よくって、家族との時間も家事も大切にしてくれている人が、在宅で働いている。そんな状態が当たり前になればうれしい。男性勢、僕たち、もっと頑張ろうぜ。