早朝出勤の謎~朝方紳士の報われない考察~

最近、朝家を出る時間がどんどん早くなっている。
僕の出社時刻は10:30だ。
9:30に自宅を出れば十分間に合うのだが、僕がこの記事を書いているのは9:22、場所はオフィスの最寄りのカフェである。

どうしてせっかくゆったり出勤する権利を手に入れたというのに、わざわざ乗車率の高い時間帯の電車に乗って移動をしてきたのか、疑問に思った。
理由が分からないのだ。
そこで、理由にいくつかの仮説を立て、ひとつずつ検証してくことにする。
検証する仮説は、「一刻も早く仕事がしたい」「一刻も早くボスに会いたい」「一刻も早く家から逃げ出したい」の、3つである。

どうでもいい?
僕もそう思う。

◆◆◆

意味や意義などという高邁な思想を捨て、まず、「一刻も早く仕事がしたい」を検証する。
真面目で誠実、責任感に溢れ自然を愛し、生後二日目には家族にその存在が知れ渡っていた僕だから、十分にあり得るニーズである。
目下の行動指針が「いかにラクして働くか」ということであることを差し引いたとしても、魂から湧き出ずる情熱を隠しきれるとは、到底思えない。

ただ、現在我が社のワーキングスタイルは、半ノマドとも言える形態である。
一応勤務時間帯という概念はあるにはあるが、事前に調整の上事情を伝えておけば、出社しないことも、プライベートな予定を入れることも可能である。
(ボスもよく仕事の合間に「ちょっとイケメンに身を預けてくる」と言って、ウキウキと外出している。共有しているスケジュール表には「整体」と記されているが、信用できない。)

オフィスに席はあるし、専用のデスクトップも設置されているが、基本的には手元のラップトップがあれば仕事をすることはできるし、実際まだ自宅にいる朝7時から9時までの時間帯を「朝の仕事時間」として業務に充てている。
いついかなる場所でも仕事を開始することができる環境があるのに、「仕事をしたいからオフィスに早く着きたい」という理論はどうにも説得力がない。

よって、「一刻も早く仕事がしたい」は、家を出る時間が早くなっている理由にはならない。

◆◆◆

では「一刻も早くボスに会いたい」はどうか。
僕とボスは元々音楽をする人と朗読をする人、という関係性で出会っている。
現在の雇用主と従業員という関係の占めるウエイトは決して小さくはないが、友人関係も失ってはいない。

その証拠に、ボスは先日「どうだ、いいだろう」と言いながら、十数分に渡るオリジナル落語を披露している舞台の映像を見せつけてきた。
まともな雇用関係にある者同士が、業務時間内にこういった行動を取るはずがない。
よって僕は「気心の知れた友人に会う」という動機から、ボスに会いたい気持ちを抑えきれず、いつもより1時間以上早く家を出た、という理論である。

美しいストーリーではあるが、これもまた説得力に欠ける。
ボスは一度喋り始めるとその後数十分は止まらない。
イエスかノーか、どちらかの返事が欲しだけなのに、最低でも10分間は喋り続けるのだ。
そして持論を展開し、聞いてもいないことに頭を悩ませ、思い出話が盛り上がったところで、爆笑しながらこう言うのだ。

「で、何だったっけ」

ボスが雇用主であると同時に愛すべき友人であることは間違いないが、だからといって毎朝会いたくて会いたくてしょうがない、という感情がわが胸中に渦巻くかというと、それは疑問である。

よって、「一刻も早くボスに会いたい」も、家を出る時間が早くなっている理由にはならないと考えられる。

◆◆◆

それでは、「一刻も早く家から逃げ出したい」はどうか。
僕はかねてより妻から受ける不当な差別の数々について、当ブログを通して強く訴えてきた。
(その結果、「お前が悪い」「嘘ばかり書くな」「私奥さまのファンです」など、多くの反感と邪教徒を生み出した。)

悲惨な歴史を鑑みた僕が妻の支配下である我が家から逃げ出したいと思うのは、ちょうど、暴君から圧政を強いられた市民が自由と安寧を求めて未開の地に亡命する様子に似ている。

しかし、ここにも矛盾がある。
わが妻と僕は生活サイクルが真逆である。
妻は強烈な夜型であるから、僕が自宅で活動をしている朝5時から9時の間はまさに寝入りばな。
隕石が降ってきても寝相で跳ね返すのではないかと思うほど深い眠りの中にいるのである。

つまりこの朝の時間帯は僕にとって、いじめっ子が風邪を引いて休んだ時のいじめられっ子の一日のように、清々しく爽やかな時間なのだ。
妻はたっぷり昼過ぎまで(日によっては夕方まで)は起きてこないから、身の安全は保証されている。
そんな素晴らしい場所から、わざわざ乗客の多い時間帯の電車に飛び込む理由がない。

よって、「一刻も早く家から逃げ出したい」もまた、家を出る時間が早くなっている理由にはならない。

◆◆◆

結局のところ、どうして朝家を出る時間が日に日に早くなっているのか、その原因を見定めることはできなかった。
何か不便や不具合が出ている訳ではないので気にするようなことでもないのだが、どうにもスッキリしない。

そういえば、出勤時間が早くなり始めた頃に、妻とこんな話しをした。

ゆ「最近家を出る時間が早いんだよね」

妻「んあ(ネットゲームをしながら」

ゆ「別に急いでる訳でもないし、時計もちゃんと見てるんだけど」

妻「ん(ネットゲームをしながら)」

ゆ「時計を見たところで、早すぎたら気付くと思うんだけどなあ」

妻「頭悪いんちゃう(ネットゲームをしながら)」

ゆ「えっ」

この件については、もう考えるのをやめようと思う。

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