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真夜中の電話でロードアゲイン。

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前回までのあらすじ

職場の忘年会に参加している父を驚かせるために二次会の会場であるカラオケに先回りしていた僕と母と叔父は、なんと父が上司の車に乗って先に家に帰ってしまうという逆サプライズを受け、ただ単に平日の夜中にカラオケに行ったという遊び人の様相を呈してしまう。

ようやく自宅に帰り着き、父と苦笑いを交わし、サァこれから寝るんだかんねと就寝の準備をしたところで、安寧の我が家に不吉な電話が掛かってきたのであった。

・前回の記事はこちら
→【強制的禁酒ドライバーと山本家ご一行の豪快な空振り劇。

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ご主人達がどれほどの危機に晒されようともクソの役にも立たない我が家のぬこ様。ただただ可愛いからという理由だけで、彼女は今日も許され続ける。

母「(ガチャ)はいもしもし。はい。はい。はい。・・・今変わります。」

父「はい代わりました。はい。はい。あー・・・はい。分かりました。今から行きます。(ガチャ)」

母→飲んでる。
父→飲んでる。
僕→飲んでない。
父→「今から行きます。」
母→飲んでる。
父→飲んでる。
僕→飲んでない。

ティ━━━━(゚∀゚)━━━━ン!!

ということで、父とふたり真夜中のドライブである。日中の仕事や大人たちの悪ふざけにより体力を消費していたところではあるが、電話を置いた両親が振り向いた時点で車の鍵を取り出していた僕は、大人なのだと思う。後から聞いた話なのだけど、随分と物悲しい表情をしていたそうだ。

まだ暖かいボディを震わせて、ジムニーたんは再び夜の国道42号線へと飛び出した。父が働いている学校の警報装置が反応し、アルソックの隊員が出動してきているというのである。現場から電話をしてきてくれた隊員によると、どうやら正面玄関の施錠忘れらしい。閉まっていなかった扉が夜風に煽られてバタバタとしたことが、警報に繋がったのだそうだ。

僕「それは最後に出て来た先生締め上げておいてくださいよ。」

父「それが中々それもしづらいんや。」

僕「どうして?」

父「さっき忘年会のスタートが遅れた理由をゆーたやろ?」

僕「生徒が悪さして、出席する先生が遅くまで指導してたってやつ?」

父「最後に学校出たんが、そいつやねん。」

僕「あぁ・・・」

生徒を指導しながら、頭の中はアルコールでいっぱいであったに違いない。不憫であるなぁと思い巡らせた瞬間に、もしかしたら今の僕の方が不憫かもしれないと何かに気付きそうになったが、運転に集中することにした。

父の学校は我が家から車で15分ほどである。前回の記事で出て来たカラオケボックスよりもよっぽど近い。これがもし山肌を削って建てられた秘境の学校であったなら(実際そういうところもあるのだ)、僕はジムニーたんを運転しながら南国少年パプワくんの主題歌「んばば・ラブソング」を熱唱し、忘年会のほろ酔い気分を台無しにされた父を追い打ちでもって絶望の淵に突き落としていたに違いない。

うんばばんばんば・・・

辛うじて理性を保ち続ける事に成功した僕は、無事父を学校に送り届けた。ちょっと待っててくれ、と言い残し、父は夜の学校へと入ってゆく。古くてグラグラしている建物に割とシビアな防犯体勢を敷いてくれている関係で、警報装置の誤作動が多いのだそうだ。そのお陰でムード満点の夜の学校に、今年になってから既に3度の緊急出勤をしているのだという。スイッチ切っちゃおうよ、もう。

父を待つ間、少しだけ近所を散策することにした。実はこの学校の近くには、亡くなったばーちゃんが20年ほど前に働いていた衣類をこさえる工場があったのだ。その会社は既に借金を抱えて潰れているのだけど、建物は残っていると聞いていた。

石畳の道路を体を丸めて歩くと、夜風がすぐ近くの海から潮の香りを連れてやってくる。小さな社を右手に流しつつ進んでゆくと、左手にクリーム色のパネルをくっつけただけの簡単な建物が見えて来た。ばーちゃんが働いていた工場である。

免許証を持っていなかったばーちゃんは、毎日じーちゃんのカローラで送迎されていた。当時はまだじーちゃんも学校の先生をしていたから、どんな時間配分で動いていたのかはよく分からない。

けれど、大きな音を立てて蒸気を吐き出す巨大なアイロンや、滑り台のようなところを抜けてゴミ箱に飛び込んでゆく布の切れ端が、6~7歳の頃の僕には凄まじく魅力的に見えていたことはよく覚えている。

今は老人のように瞼を降ろして夜に横たわるこの建物に、ばーちゃんがいて、じーちゃんがいて、僕が居た瞬間があったのである。ポケットの中で握りしめてい冷たいiPhoneが、それは過去なのだと、呟いていた。

しばらくすると、アスロックの隊員ふたりに挟まれて父が戻ってきた。この瞬間だけを切り取れば、父は確保された不審者である。僕はようやくの平穏に向けてハンドルを切った。父も助手席でようやく落ち着いた表情を見せている。観念したか、不審者め。

父「もう一回電話鳴ったらたまらんな。」

僕「発狂します。」

父「次鳴ったら今度は侵入者やで。」

僕「あぁ。侵入者だったことはあるの?」

父「今年は一回あったな。」

僕「マジで。」

父「発狂すんで。」

野暮なヘッドライトで闇を掻き分けながら、ジムニーたんは今日4度目の国道42号線を走った。帰宅して父のお湯割りを少し貰うと、凄まじい勢いで眠気が溢れて来た。もう電話は鳴らなかった。

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