今やっていることが本当に好きかどうかを判断するために、一度辞めてみるという方法がある。生活からそれを切り離し、一旦距離を取ったところで自分の心がどう動くかを見極めるのだ。
しかし、この方法は非常に難しい。何かをやめるためには、決断力が要るのである。これは僕が所持していない能力のうちのひとつである(他にも「威厳を纏う能力」「勇気を振り絞る能力」「言葉の合間に「えー」を挟まない能力」などを所持していない)。
決断が難しい理由は、大きく分けて57382ある。そのうち僕の口から語っても信憑性のあるものを選りすぐると、3つになる。
ひとつ目は、決断には保証が伴わないということだ。
例えば事業を立ち上げる決断をする時、その先の収益や生活の安定が保証されていることはまず無い。しかも、根本的に幻想である安定を目指すべきものであると信じている人も多いから、周囲からの反対活動も活発になる。
それはちょうど、ドリンクバーで飲める全ての飲み物をグラスの中でブレンドすることに似ている。周りの者は自分がやったことが無いにも関わらず、それは具合が悪くなるからやめろと決断を揺るがしに掛かってくる。
しかし僕は鉄の意思を持つ男である(融解温度の低い特殊な鉄だ)。向かい風の中を身を切るような思いでドリンクバーに向かい、緑茶と紅茶のティーバッグを入れたグラスにアメリカンコーヒーとカルピスとコーラとオレンジジュースを注ぎ、一気に飲み干したところ、緑茶と紅茶のティーバッグを入れたグラスにアメリカンコーヒーとカルピスとコーラとオレンジジュースを注いだものを一気飲みすると具合が悪くなることが判明した。負ったリスクを踏んでダメージを受けることは多々ある。
だから決断は難しい。
ふたつ目は、決断には習慣の変化が求められるということだ。
決断の中には、今やっていることをやめる、というのと同じように、「これからはこうしていく」という習慣に言及するものが多い。しかし三島由紀夫が怪物と言ったように、習慣とはまさしく人の人生を支配しているものである。そう簡単には変えられない。
脳科学的に言えば(僕が脳科学を持ち出すと、一気にこの科学分野が胡散臭く感じられるから不思議だ)、人の意識には有意識と無意識がある。習慣とは無意識の領域の出来事なんである。
例えば、多くの男は目の前で彼女が右手を動かすと身体を強ばらせて防御態勢を取るが、これも日ごろからの習慣である。自分がどうのこうの出来る意識レベルよりももっと深いところで緊急警報が鳴り響いている訳だから、一時の決断でこれを解消することは難しい。
習慣を打ち消すことができるのは、習慣だけである。そのためには、自分自身の無意識を再教育する必要がある。彼女が右手を動かすのは僕を殴るためではなく、韓流ドラマの俳優にエールを送るためなのだと何度も言い聞かせるのだ。
しかし、韓流ドラマの俳優にエールを送ったその拳で、「どうしてお前はイ・ビョンホンではないのだ」と殴打を繰り出してくるケースがある。その場合、全く無防備なところに拳がめり込むことになるから、せっせと自分に言い聞かせる言葉よりも、より効果的に無意識を教育される(場合によっては命にも関わる)。
だから決断は難しい。
みっつ目は、決断したことを忘れるということだ。
決断とは、「断つことを決める」というものだ。それまでの考えを断ち、習慣を断ち、生き方を変えるということである。
それに対し、人間は忘却の生き物である、という事実もある。自分にとって苦痛になることや都合の悪いことは、自動忘却機能の働きにより記憶から抹消されるように出来ている。その決断が苦痛を伴うものであればあるほど、脳はそれを忘れるように努めるのである。
これを防止するためには、常に隣りにいて鞭を打ってくれる人物の存在が不可欠となる。昔の奴隷を従えた悪徳貴族などが実はそうで、どんなに辛く苦しいことも、繰り返し強要し継続させれば、その思考回路が脳に定着するのだ。
自分ひとりでこれを実行するには、常に目の届く場所に決意の表明をメモにして貼付けておくことは勿論であるが、それ以上にその決断が「楽しい」「気持ちいい」「幸せである」ということを覚える必要がある。
例えば、日ごろの勉強は苦痛であるのに、同じくらいの情報を処理しなければならないゲームに夢中になったり、教科書よりも遥かに高額なゲーム機本体をリニューアルの度に買い足すのは、ゲームが「楽しいから」に他ならない。勉強の方がゲームより楽しいと感じれば、人はニンテンドーDSを放り投げてでも勉学に勤しむものである。
楽しいを感じるためには、「努力の成果がすぐに目に見える」必要がある。アクションもロールプレイングもシュミレーションも、慣れや積み重ねの成果がすぐに見えるから楽しいんである。数学であれ国語であれ、この努力と成果のスパンをもっと短くし、画面一杯にクリアー文字を出して花火を打ち上げファンファーレを鳴らすくらいのことをすれば、楽しくなってくるのだ。
これを実践するため、ダイエットで自分の体重が1キロ減ったところで回転寿しとコンビニケーキで減量を祝ったところ、翌日体重が2キロ増加していたという事案が発生した。ああすればこうなる、というのも人生である。落とし穴は思わぬところに口を開いていて、迷える子羊を待ち構えている。
だから、決断は難しい。
今年の誕生日に仲間の朗読家の方が突然加工して送ってくれた写真。写真ひとつアップする決断にも、ある程度の覚悟が要る。
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