不安の種を蒔く者がいる。

人は様々な形の嘘を付く。インチキ霊能商法を行う詐欺師は相手の不安を煽り、その不安を解消するために壷や数珠を高額で提供するのである。だいたいの良くないものは当事者が元気健やかになれば消えてなくなるので、人が自分の感情を煽ってきたらそいつは詐欺師だと考えて良い。

ところで、こういったインチキ霊能者的に根拠無く不安を煽り安定を勧めその道で己の欲求を満たそうとする者があなたの身近にいることをご存知だろうか。

それは親であり、友であり、同僚であり、同級生であり、あなた自身だ。

例えば、誰かが結婚をしないのであれば、その人は結婚をしない人生なんである。理由はどうあれ、そう自分で選択しているのだ。それを傍から大昔の感覚で結婚しなければ老後がどうだとか子供がどうだとか、不安を煽るだけ煽って何がどうなると言うのか。

本人が結婚したければ、反対を押し切ってでも結婚するものである。仮に不安を煽られた結果結婚をすることになったとしても、今度はその相手との結婚生活が幸せかどうかという問題が生まれる。

相手の男がロクでもなかったり（「給料をギャンブルで使い果たす」「酒を飲んでは暴れる」「満月の夜に肛門を月光に当てる生活習慣がある」など）、相手の女がロクでもなかったり（「給料をブランド品で使い果たす」「食っちゃ寝食っちゃ寝でぶくぶく太る」「パートナーの生殺与奪の権限を全て握っていると思っている」など）した場合などは、誰が骨を拾うというのか。

他にも、

「音楽で食っていくのは難しいぞ。」

「社会は厳しいから、今のままじゃ絶対に振り落とされるぞ。」

「なんかよくわかんないけどお前は今のままじゃよくないんだぞう。」

などなど、僕が向けられてきた不安を煽る文言だけでも、数知れない。音楽を捨て適当な職に付きそこで遣り甲斐と幸せを感じるよう努力することも、ひとつの正しい道である。だからといって、自分がやりたいことで社会に貢献し、そこで遣り甲斐と幸せを感じる努力をしてはならない理由にはなり得ない。

それらは本質的に同じことであるし、そもそも人の人生に不安の種を蒔くようなヤツほど、ロクな人生を歩んでいないものである。

やりたいことを頑張りなさい、と言うことが無責任なことであるなら、安定した職に付きなさいと言うこともまた無責任だ。どのような形になっても人生は進んでゆく。ならば、どのような形を取っても良いではないか。真の安定は、不安定に対応し続けることでしか得られないのだ。

そんなことを思い、僕は今日も自分の仕事と向き合っている。これからの成長が楽しみでならない。