優秀な人は皆口を揃えて「優先順位を付けて取り組め」と言う。言いたいことは分かる。様々な選択肢の中から優先すべきプロジェクトを、タスクを、アクションを選択し、効率よく成果を出す。素晴らしいと思う。
ところで、僕は優先順位を付けるのが極めて苦手である。自分がやりたいと思ったことは全部大切だからだ。家庭も仕事も友人と話す時間も独りの時間も全部、全部大切である。優先順位など、付けられるはずがない。
プロジェクトはいい。ゴールが決まっているのだから、何が達成されればそのゴールに辿り着けるのかを洗い出してしまえば、あとはほぼシングルタスクの連続として処理していける。
プロジェクトが複数重なるとやっかいだ。今日何をするのか、よりも、今日何をしないのかを決めるのが難しい。
これも、できる人は概ね見えている作業内容から感覚的にだいたいの時間見積もりを出し、その見積もりを元にスケジュールが組める。つまり、今日何をしないのか、を導き出せる。
ここがテッテーテキにあかんのです。感覚的な時間見積もりってなんだ。作業しながら時間のことなんか感じとらんわ。そんなスキル、僕の中には積み上がってないんじゃ。
過去の似たような分量・質の作業に何時間掛かったかは作業ログを取っているから当たりを付けられなくもない。しかし過去は過去、今は今だ。その見積もりが今回の件にフィットするかどうかなど、分かるはずがない。そう思うと、思考に融通が効かなくなる。
だから僕は、物事に優先順位を付けられない。
世の中には、優先順位付け機能のある人とない人がいる
自分の中で行動の感覚と時間の感覚が分離していることにに気付いたのは、今の会社のボスと話しをしていた時だ。
会社では明けても暮れても「見通しを立てろ」と言われた。言われても、どうしていいのかさっぱり分からない。「昔やった似たような作業のことを思い出して」。無理だ。作業のことは思い出せるが、どんなに記憶のフォルダを漁っても時間の感覚がない。参考できる情報がない。
そうやってよくフリーズして、何時間もPCの前で固まっていた。そんな僕を見ているボスも訳がわからなかったらしい。ボスにとって過去の経験から時間を見積もり、優先順位を付けることは、子どもの頃から当たり前にできることだったからだ。
その後僕には過集中や、見通しを立てること、複数のタスクを並行処理することが著しく苦手という、いわゆる発達障害の傾向があることが分かってくる。なるほど確かに昔からそうである。しかし、だからといって日々は止まらない。やりたいことのプロジェクトは複数乱立し、タスクは積み上がる。アクションし続けなければ、いろんなものが回らない。
優先順位が付けられない人として、僕はどうすればいいか。僕とボスでは能力に差があり過ぎて、見積もり見通しに関する話題になると会話が成立しない。お互い何が分からないのか分からないので、質問をすることも、アドバイスをすることもできない。
僕は仕方なく毎日タスク管理について独学で調べまくり、試しまくった。その結果、ひとつの考え方に至った。やりたいことを、全部やってまばいい。
優先順位が決められないなら、全部やろう。
身もふたもないプランだが、そこが気に入っている。
全部やるといっても、1日は24時間しかない。今僕は短眠チャレンジ中で毎日の睡眠時間が4〜5時間まで短くなっているけれど、それでも残りの20時間で、やりたいこと全てに″存分に″取り組むのは不可能だ。
だから毎日1時間、全てのプロジェクトに5分ずつダッシュで取り組む時間を作るようにした。その5分間ダッシュの間は、締め切りが一週間後の仕事にも、一ヶ月後の帰省の段取りにも、いつ達せられるか分からない夢の実現に対しても、等しく5分を使う。これが全俺の中でヒットした。
5分は短いが、偉大だ。5分あれば、例えばブログなら100〜150文字くらい書けるし、フォルダの整理もできる。直近の作業のリマインドもできる。5分ずつでも作業を積み上げれば、それらはいつか必ず完了する。やりたいこと全てに着手するから、自分を置き去りにしている感覚もなくなる。よく僕が
「毎日やりたいことやってますよ!」
というのはつまり、毎日5分間ダッシュでやりたいことに一通り手をつけている、という意味なんである。
毎日やりたいことを全部やるためには準備が要ります
といってもやることはシンプルだ。「①全てのやりたいことのプロジェクトを5分で処理できるタスクに砕いてリスト化する」と「②今日の5分間ダッシュでやることリストを作る」である。
簡単にやり方を見ていこう。
①全てのやりたいことを5分で処理できるタスクに砕いてリスト化する
5分という時間は偉大だが、何をするかを決めずに物事に当たるには短すぎる。何をするんだったっけ、と斜め上を見上げると、ただちに過ぎ去ってしまう。
なのでその前の準備段階として、やりたいことを整理して、「5分間取り組めそうな具体的なタスク」を作ってしまおう。「5分で終わる」ではないことに注意してほしい。
例えば「ブログ記事を書く」タスクは(僕の場合)とても5分では終わらないが、5分間取り組むことはできるのでアリだ。
対して「スケジュールの管理・調整」は僕にとっては生活の生命線になるタスクである。勢いで振り切らず丁寧に取り扱いたいので、5分だけ取り組むというアプローチには向かない。
このように、5分ずつでも積み上げられるタスクなのか、まとまった時間がなければ処理できないタスクなのか、タスクの性質とあなたの性質を突き合わせて落とし所を見極める必要がある。まぁ、やってみると色々分かるので、結局はそれが一番手っ取り早い。
タスクの砕き方については過去にいくつか記事を出しているので、参考にしてほしい。一応簡単に説明しておく。
やりたいことA、B、C、、、と、あなたのやりたいことを大まかにプロジェクトごとに整理する。そのプロジェクトごとに一枚ずつ紙を用意し、砕いたタスクを書き出していく。付箋で作業すると後から張り替えや整理ができて便利だ。それが用意できたら、この項目は終了である。
②今日の5分間ダッシュでやることリストを作る
ここは簡単だ。さきほどやりたいことプロジェクトごとに作ったタスクリストの中から、今日やるものをバシバシ引っ張ってきて、デスクや壁、別の紙などに、「5分間ダッシュタスクリスト」として貼り出せばいい。
1タスク5分なので、1時間を確保できるなら12タスク、30分なら6タスクを選ぶということになる。
終わったタスクは付箋なら握って捨てるか、元のプロジェクトごとの紙に戻せばいい。紙にタスクを書き出したなら、ひとつずつチェックをつける。全てのタスクに5分ずつ手を付けたら5分間ダッシュは終了だ。
③涙を飲んで5分で止める
コツは2つだと言ったのに、書いているうちに3つ目があったことを思い出した。ゆるしてぴょん。
5分間ダッシュで取り組んだタスク達は、すべて「やりたいこと」である。ここに危険がある。つまり、やってる間に楽しくなっちゃって、やめられなくなるのだ。
別にいいじゃん、という考え方もできる。できるが、今回の記事の目的は、物事に優先順位を付けられない人が仕方なく、取り敢えず、目の前のやらなければならないタスクに取り組むことで、本来やりたいと思っていたプロジェクトやタスクがこぼれていまうことを防ぐことだ。そのためのネクストプランを提示することだ。
その視点に立つならば、僕はこう言わざるを得ない。どんなに楽しいことも、涙を飲んで5分で止めなさい。不完全燃焼で止めなさい。やり切れなくても止めなさい。中途半端で止めなさい。続けたくっても止めなさい。
きっとあなたのやりたいことは、ひとつではない。やらなければならないことも抱えているはずだ。それらのプロジェクトやタスクを、今目の前にあるやりたいことで圧殺してはいけない。あなたのやりたいことに、罪を背負わせてはならない。
やりたいことを取りこぼさないことがあなたの願いなら、どんな楽しい作業も5分で止めて、次のタスクに進みなさい。
そこで感じる未達成感、気持ちの悪さを持って、「僕は/私は行動している」と胸を張ればいい。それでええんやで。
やりたいことをやる、は、面倒くさい
突然だけど、整体院のwebサイトにはLP(webサイトにやってきた人にお客さまになってもらうためのメッセージを掲載したページ)がないところが多い。
それをすれば集客が増え、経営が上向きになり、貢献できるお客さまも増えるのに。なぜか。面倒くさいからだ。
このご時世、たいていの情報は本やネットで手に入る。自分のやりたいことの領域で先に成果を上げている人とも、割と簡単に出会える。すると結局は、知った情報をどのように活用するのかという、自分の問題ということになる。
その知り得た情報を的確に処理することを妨害してくるのが、面倒くささ、という感情だ。面倒くささはあらゆる理由をかき集めて、物事に取り組まない、取り組めない事実を作り出そうとする。ある意味、新しく知ったことを実践しないのは、実践することに比べると自然であると言える。
やりたいことをやる、は、面倒くさい。仕事や家族との動きを調整し、ある時は睡眠時間を削ったり、ある時は満員電車の中でスマホで作業をしたりする。
卑屈になったり拗ねてしまうと実現のスピードが遅くなるから、自分の体調や意識のコンディションを整え続ける必要もある。
身近な人々にサポーターでいてもらうための努力や、人との出会いをつなぐコミュニケーションスキルを磨き続けることもやめられない。
何より、自分がやりたいことに対する知識やスキルを積み上げ、まだ出来ないことに挑戦し、世の中に打ち出していくことは、未熟な自分を世間に向かって全裸のまま晒し続けるような不安感との戦いでもある。
それでもやると、僕は決めている。なぜか。それが自分の幸せにつながっていることを知っているからだ。
面倒くさいものに向き合うことを、人に強要はできない。だからお誘いする。面倒くさいこと、やろう。一緒に。
あなたが面倒くさいことに挑戦している時、僕もここで同じように面倒くさいことに挑戦している。僕たちは一人ではない。面倒くささは終わらないが、間違いなく幸福度は上がっていく。自分を好きになれる。毎日が面倒くさくて、楽しくなる。
そういう世界を一緒に遊びたいのだ。あなたと。