二日間続いた雨雲が離れてゆくと、その隙間から冬の冷たい空気がストンと落ちてきた。
それは和歌山の高い山の輪郭をなぞるようにまっすぐに滑り降りてくると、不意に置かれてあった刃物のように僕たちの爪先を撫でてゆく。
僕は小さな水筒に入れたコーヒーを盾に細い道を登って、石段の上で先に上がっていたじーちゃんと合流した。
じーちゃん「おぉいよあいぇ。」
僕「がんばろうかー。」
人生も年季が入ってくると、言葉など不要である。
じーちゃんは言葉ではなく意思を飛ばしているのだから、こちらとしては受け取ったインスピレーションを信じて反応をすればいい。
じーちゃん「おぉいよあいぇ!」
僕「・・・は?」
正しく伝わるとは限らない。
道具の準備していると、じーちゃんがよっこらと腰を掛けて早速コーヒーを飲み出した。
水筒は小さいので、コーヒーが二人分しか入らない。
自分のコーヒーが滅亡の危機を迎えていることを感じながら段を登ると、何があったのかみかんの木が一本倒れていた。
成った実が重かったのか、根元が腐ってしまったのか、それは不思議な力強さを持って、しかし確実に木としての生を燃やし尽くそうとしていた。
僕が子供の頃からあった木である。
今年は秋の台風で一本倒れていたから、今年は合わせて二本の木が倒れてしまったことになる。
畑の規模が少し小さくなってしまうことを寂しく思いながら、これからは僕がしっかりと畑を広げてゆかねばならんのだと決意などを握りしめたりする。
なお、写真を見るとじーちゃんが準備運動代わりに木をなぎ倒したように見えなくもない。
僕はこの木が倒れた瞬間を見た訳ではないから、事実がどうであるかは、読者諸氏の判断に任せる。
今年は暖冬の影響か、みかんの実の色付きが少々遅れている。
いつもなら11月ごろから採り始めるみかんがまだほとんど収穫されていないのは、これが原因である。
木に登ってみたり脚立に登ってみたりしながら、日当たりの良いところに成っている色付きの良い実を中心に採ってゆく。
鳥がついばんだ実を鷲掴みにして汁まみれになった軍手で目を擦って悲鳴を上げていると、木々の隙間葉の影玉の上に、カエルさんを発見した。
この季節のカエルさんは、どう考えたって動きが鈍い。
そんなヤツがただでさえ目立つ上にクチバシで突っつかれたりするみかんの実の上で半冬眠状態になっているのだから、射的の的の正面でお茶でもしばくが如き鉄の度胸である。
っていうか君そんなところで何してんの。
ということで一日いっぱい仕事をして、合計で17箱のコンテナを作って下ろした。
後になって気付いたのだけど、途中から参加したブラザーちゅわさんが半袖素手だった。
どうしてこんな子に育っちゃったのこの子。
一口も飲んでいないのに空になった水筒を抱えると空がとても高く感じられた。
今日も和歌山は平和である。
という訳で、ご注文いただいた数の有田みかんダンボールを地元の農協で買ってきたら、ついさっき新しい注文が入ってまた明日新しく買いにゆくことになった。
嬉しい二度手間である。
少し多めに買い込んでおくので、ご注文や無料サンプルの請求があれば、お早めにご連絡をいただきたい。
何せ僕自身が大阪の事務所での仕事もある上に、みかんの通販の仕事は全て僕の仕事である。
今月末には市場や商人への卸しなどもあるので、迷っていたらとにかくサンプル請求かご注文をしていただきたい。
詳細は、こちらのページにある。
山本みかん農園ページ。
それでは、最後までおつき合いありがとうございました。
盗撮されたイケメン。
南国の軽トラ野郎である。