「楽器を弾きながら歌えない」「どうしたら楽器を弾きながら歌えるようになるの?」そんな疑問に答えます。
◆この記事を読むと分かること
・楽器(ギター、ピアノなど)を弾きながら歌うための練習の作り方
・思ったように演奏が上達しない時にストレスを和らげることのできる思考法
・筆者がどんなに楽器の練習をしても弾き語りが上手くならなかった時にやっていた間違い
ギターの弾き語りを人にお教えするようになって10年近く経ちました。人によって課題になることは違うのですが、手こずるところはびっくりするくらい似ています。
そのうちの一つが、楽器を弾きながら歌う、ということ。歌だけなら歌えるし、ギターだけならまぁそれなりに弾ける。でもせーので同時にやろうとすると、上手くいかない。そんな感じです。
ところで、実は僕は「ギターを弾きながら歌う」が、わりと最初からできた人です。僕が器用で、才能があったから、ではありません。僕は人一倍不器用ですから、そんなことはあり得ません。そこにはきちんと説明のつく理由があります。
そしてその理由が、今「ギターを弾きながら歌う」が課題になっているあなたの助けになるはずです。実際に大勢の方が、この考え方で練習プランを見直して、弾き語りができるようになっていきました。
シンプルなことなので、ぜひヒントを持っていってください。
弾き語りで歌えない人が最速で歌えるようになるための練習プラン
結論からいきましょう。これから楽器を弾きながら歌えるようになりたい人が取り組むべき練習プランは、
ギターをたっぷり練習してから「歌を主役」にして弾き語る
です。
シンプルで明快。もしかしたら「もう知ってるよ」という方もいるかもしれません。でもちょっと待って。「知ってる」と「出来ている」って、全然違うんです。
この後の項目では、この練習プランの考え方を「知らなかった」方にも、「知っていたけど出来ていなかった」方にも、役に立つ情報をシェアしていきます。
「もう知ってるよ」と思った方も、ぜひこのまま読み進めてみてください。
「手に負えないこと」は同時にできない
「人は2つのことを同時にはできない」とよく言われます。本当に?実際できてること、結構あると思いません?
例えば、自転車の運転。ペダルを漕ぎながら、周りに気を配って、お腹空いてきたな〜なんて考えながら、場合によっては隣にいる人と話しをしたりして。うん、これ、めっちゃ色々同時にやってるよね。
そう、僕たちは「手に負えること」なら、同時に無意識的に処理できる。そういう脳を持っています。
最初は自転車に乗れなかったよね。乗れたと思っても、曲がれなかったりしたよね。曲がれるようになっても、手放し運転とかできなかったよね。
そういう、新しく目の前にやってきた「手に負えないこと」を、どんどん練習して、慣れて、「手に負えること」にしてきた。それが僕たちと自転車のお付き合いの歴史です。
弾き語りもそれと同じ。目の前にある「手に負えないこと」を、ひとつずつ丁寧に「手に負えること」に育てていく。そういうことを意識的に繰り返していけばいいんです。
じゃあ、その最初の「手に負えないこと」は何か。そう、「楽器を弾くこと」ですね。
ギターの演奏を″少しずつ″「手に負えること」にしていく
僕が最初からギターを弾きながら歌えたのは、まさにここに答えがあります。僕がギターを初めて触ったのは小学5年生の時でした。で、弾き語りを始めたのは中学3年生のころ。
もう分かりましたよね。「ギターを弾きながら歌いたい」と思った時点で、僕にとってギターを弾くことは、「手に負えること」だったんです。
何てったって最初に教わったのはクラシックギターです。右手も左手もワキワキワキワキ動かす、アレです。だからコードを押さえてジャカジャカ弾くって、すごい楽だったんですよ
まぁ、ただのラッキーなんですけどね(笑)
とはいえ、当時の僕は11歳とかの子どもです。ただガムシャラにギターを弾きまくるという、とっても効率の悪い練習方法を取っていました。
あなたは、そういうことはしません。演奏できるようになりたい曲があったら、コードの押さえ方を覚えて、それなりに音が鳴るように練習し、コードチェンジが素早くできるように反復練習しつつ、右手はストロークを作ります。
ギターを弾くことを、徹底的に練習してしまいましょう。そうやって、大人が計画を立てて、ていねいに練習に取り組めば、子どもがガムシャラに取り組むよりも、ずっと効率的に技術を修めていけます。
考えることができるのが、大人の特権です。それをフル活用して、ズルく効率的にやっていきましょう。
できることの「半分」だけやる
ちょっとずつギターの演奏が「手に負えること」になってきたら、いよいよ歌と合流します。ここで重要になってくるのが、できることを全部やろうとしないことです。
「手に負えること」の最前線って、「手に負えないこと」のすぐ隣りだったりします。ギターを弾くだけなら「手に負えること」が、歌いながらだと「手に負えないこと」に戻っちゃう。
悔しいけど、そういうことってあるんですよね。
だから、そろそろ歌とギターを合流させるぞ、という時には、今ギターでできることの半分くらいのレベルで演奏する、ということを意識します。
なんとなくコードストロークができるのなら、小節の頭一拍目だけを「ジャララーン」と弾くだけにする。
2.4拍目にアクセントを付けられるのなら、アクセントを忘れてジャカジャカやるだけにする。
ただギターを弾く時よりも、歌いながらギターを弾く時は、「手に負えること」の面積がすごく小さくなる。だから、できることの半分だけをやるくらいで、やっとちょうどいい。というわけです。
「手に負えること」をちょっとずつ広げていく
できることの半分の技術を使って、なんとなく弾き語りができたとして。もちろんそれからもギターだけの練習だってするし、歌の練習だってした方がいい。
でもそれと同時に、ギターを弾きながら歌うことそのものの練習も、ぜひ意識的にやってみてください。
自転車に乗って10mでも走れたら、次にやることは、自転車で走っている状態に慣れていくことです。弾き語りもこれと一緒。ギターを弾きながら歌うこと、それ自体を「手に負えるもの」にしていくこともできるんです。
やることは簡単。弾き語りをしながら、今日はこれをやってみよう、というチャレンジをひとつずつ潰していくだけです。
1拍目だけを鳴らして歌っていた人は、3拍目でもギターを鳴らしてみる。
コードストロークで演奏できるようになってきた人は、メトロノームを鳴らしてリズムキープをしながら演奏してみる。
メトロノームに慣れてきた人は、2、4拍目にアクセントを付けて演奏をしてみる。
そんな風に、自分の「手に負えること」をちょっとずつ拡張してく。一気に拡張できないのよね、残念ながら。ちょっとずつなんです。人間って。
毎日ちょっとずつ「手に負えること」を拡張している人は、あっという間に成長します。やってるうちに、「手に負えないこと」にチャレンジすることが楽しくなります。レジャーになるんですよね。
そこまでいったらこっちのもんです。ちょっとずつちょっとずつ、やっていきましょう。
まとめ〜本当は歌だって難しいし奥が深い〜
歌うことって、喉を中心とした全身運動です。僕らは自分の体とは年齢年数だけ付き合っているから、歌うことの熟練度って、意外と高い。
対して、ギターって普通は日常生活の中で使うことのない道具です。だから原則として、歌よりもギターの方が熟練度が低い。
結果的に、ギターを弾きながら歌うことの足を引っ張るのは、ギターの演奏である。
ならばギターの腕前をちょっとずつ積み上げて、「手に負えること」を増やしていこうではないか。というのが、この記事での僕の主張です。
とはいえ、まるで「できて当たり前」みたいにスルーしてきたけれど、歌を歌うことって、深いんですよ。いくらでも探求できるし、伸び代もある。生きている限り永遠に練習をし続けられる楽器なんです。
だから、ギターを持てない時は、ぜひ歌うことを意識して過ごしてみてください。響きの気持ちいいところを探してみたり、わざと音程を意識して話してみたり。できること、いろいろあります。
そして最後にもうひとつ。弾き語りはミュージシャンが一人で行う歌とギターのセッションですが、主役はやっぱり歌です。
たくさんの方にレッスンを提供してきましたが、小節の一拍目だけを「ジャララーン」と弾いて、ビシッと磨いた歌を歌えば、もうそれで弾き語りとしては申し分なく成立します。そういうケースが、本当に多いんです。
何が言いたいかっていうとですね、僕は昔、歌に向き合わないようにするために、ギターばっかり練習してたことがあるんですよ。もうね、びっくりするくらい上達しませんでした。そりゃそうだよね。主役が練習サボってるんだもん。
「私が主役です!」「俺がスポットライトを浴びるんです!」
気恥ずかしさを捨てて、そこをゴールにしてみると、「ギターを弾きながら歌う」のハードルは、驚くほど下がります。満足感は?上がるんです。
最後はちょっと経験からの落とし穴をシェアしましたが、もしビビッときた方は、自分の練習に取り入れてみてください。
YouTubeチャンネルの方で、似たような課題を持った生徒さんにレクチャーした内容を動画にしました。よかったらどうぞ。
※うちの子の泣き声が入っちゃってるの。ごめんね
それでは、また。