こんにちは。山本ゆうさくです。
アコギで弾き語りをしてるんだけど、ジャカジャカしたり、なんとなくコードをポロポロする以外にも、もっといろいろなアレンジに挑戦したい。でも、アコギのアレンジってよく分からない。
そんな悩みにお答えします。
◆この記事を読むと得られること
・どんな曲にも使える弾き語りギターアレンジの考え方
・今すぐ実践できる具体的でシンプルな演奏技術
僕自身は数年前までフリーのミュージシャンとして活動していました。もちろんプロだったので、いろいろと勉強もしていたものですが、その中でも最高に楽しくて大好きだったのが、ギターのアレンジです。
たとえば、こんな感じ。※当時の演奏動画なので、今よりずっと若いやで。
アレンジのあるなしで、楽曲の雰囲気って全然変わります。で、アレンジができるかどうかって、確かに演奏技術はある程度必要なんだけど、その”程度”って思ってるよりもハードルが低いんです。
そんなわけで、今回は脱・初心者〜レベルアップしたい中級者、向けの内容です。記事を読み終わる頃にはギターが弾きたくてしかたなくなっていますから、ワクワクしながら読み進めてくださいね。
アコギ弾き語りのアレンジで一皮剥けるための基礎知識
僕に実用的な音楽の作り方を教えてくれたのは、ひとつ年上のドラマーの友人でした。彼は実に論理的に音楽を研究し、精力的に演奏活動に取り組んでいたので、同じ時間を過ごすだけで、素晴らしい影響を与えてくれたものです。
彼はたくさんのことを僕に教えてくれたのですけど、その中でも楽曲のアレンジという点で、今も心に残っている名言があります。それが
音楽は高い音と低い音を整理整頓して並べたもの
です。どうでしょう、最高にクールだと思いませんか?
僕たちの中には素敵な音楽を演奏したいという情熱があります。情熱は素敵な演奏をするために必要な要素ですが、情熱だけで素敵な演奏できるほど、音楽は困難ではありません。
時として「情熱さえあれば」と考えてしまう僕たちは、素敵な演奏ができない時、そして素敵な演奏をしている人を見かけた時、自分と他人の差を、情熱の量や、才能の差だと解釈してしまいがちです。
「音楽は高い音と低い音を整理整頓して並べたもの」という言葉は、音楽が情熱や才能だけで構成されているのではないということ。そして学び、努め、実践を積み上げることで、凡人にも探究の余地のあるものである。そんな意味を含みます。
この言葉に、何度心を救われてきたか、分かりません。そして、この言葉からどれだけの楽曲のアレンジが生まれてきたかも、分かりません。冒頭に貼り付けた、『勝手にしやがれ』のカヴァーも、そのひとつです。
さあ、大切なことなので、もう一度お伝えしましょう。「音楽とは、高い音と低い音を整理整頓して並べたものである」。これを僕たちの共通言語として、次の項に進んでいきましょう。
セクションごとに盛り上がりレベルを考えてみよう
いよいよ具体的な話しに入っていきます。
楽曲のアレンジをする時には、いきなりギターを持ちません。最初にするべきことは、あなたの中で流れているサウンドがどういうものなのかを明らかにすることです。楽曲のアレンジは、それを表現する手段なのですから。
紙とペンを用意してください。そして、あなたがアレンジを施したい楽曲に合わせて、このようなメモを書き込みます。
○曲名
イントロ
Aメロ
Bメロ
サビ
間奏
A’メロ
B’メロ
サビ
間奏
Cメロ
サビ
アウトロ
その曲がどんな構成でできているのかを明らかにしました。次は、それぞれのセクションの隣に、「盛り上がりレベル」を1〜5段階で書き込んでいきます。
○曲名
イントロ 4
Aメロ 3
Bメロ 2
サビ① 4
間奏 4
A’メロ 1
B’メロ 2
サビ② 4
間奏 4
Cメロ 2
サビ③ 5
アウトロ 4
できましたか?これが、あなたがこれからアレンジを施す楽曲の、盛り上がり曲線です。楽曲アレンジの大きな設計図とも言えます。
盛り上がりレベルを設定するポイントは、「レベル5」を多様し過ぎないこと。今あげた例だと、この曲の中で一番盛り上げたいのは「サビ③」です。
一番盛り上げたいセクションと、それ以外のセクションの盛り上げレベルが同じというのは、おかしいですよね。
さあ、盛り上がりの設計図が書けたら、後はセクションごとに設定した盛り上がりレベルを表現できるように、アレンジを施していきます。具体的にどのようにすればいいのか。次の項でお話ししましょう。
盛り上がりレベルを左右する3つの要素
楽曲の盛り上がりを演出する要素はいくつもありますが、今回はシンプルなところで、この3つを紹介します。
・音量(音の大きさ)
・音圧(同時に鳴らす音の数)
・リズムアクセント
改めて、不肖私めの演奏動画を貼り付けます。この曲のアレンジは、音量のコントロールはちょっと分かりにくいかもしれませんが、音圧とビートで大きく変化を付けています。
・イントロからAメロに移行する時
・AメロとA’メロ(1番の2回目のAメロ)の間のリフ
・A’メロからサビに入る時
・1番の後の間奏から2番のA’’メロに入る時
などなど、セクションの切り替わりのタイミングで、色んなことを変えているのが分かると思います。その辺に注目して、あたらめて動画を見てみてください。2番のサビ前くらいまでで結構です。
なんとなく分かりました?
印象的なリフを弾いたり、ボディを叩いたり、派手な要素が目立ちますが、そんなことよりもセクションごとに変化を付けることの方が大切です。どんなに派手なスキルも、何回も続くと飽きちゃうもん。
アレンジに役立つテクニック
動画では、僕は僕の持っているテクニックを駆使してアレンジをしています。あなたは、あなたの持っているテクニックを駆使してアレンジをすることになります。
アレンジで役立つテクニックをいくつかご紹介しましょう。もうネタとしてお持ちのものもあれば、これから身に付けるものもあると思います。ぜひ手に負えそうなものから、はじめてみてください。
音量コントロール
意外に思うかもしれませんが、音量のコントロールも立派なアレンジの技法です。
凝ったテクニックを採用しなくても、盛り上げレベルに合わせて音量をコントロールできれば、それだけでかなりの変化を演出できます。
そして演奏が上手い人ほど、音量のコントロールが繊細で精密です。じっくり取り組んでいきましょう。
ブリッジミュート
ピックを持つ手の小指側のお肉を、ブリッジから出てすぐのところの弦に当てて、わざと弦の鳴りをボンボンさせるのが、ブリッジミュートというテクニックです。
なつばやしさんの解説動画が分かりやすいので、ぜひご覧ください。
音量と音圧の両方が絞れているのが分かると思います。そして、ミュートを外して開放弦の音を鳴らせば、ビートの演出にも高い効果を発揮します。
ブリッジミュートはギター弾きにとっては規定演技と言ってもいいほど、重要なテクニックです。ぜひ優先して取り入れてみてください。
アクセントの位置をズラす
たいていのポップミュージックは4拍子で、たいていの曲は2拍目と4拍目にアクセントが入ります。バンドだと、スネアが鳴るところね。
このアクセントの位置をズラすと、ビートが変わって曲の雰囲気がガラッと変わります。例えば、アクセントの位置を2、4拍目から3拍目にズラす、とか。
こちらも手前味噌&古い動画で恐縮ですが、資料としてご覧ください。1番のAメロだけでいいです。和田光司さんという方のカヴァーで『Butter-Fly』という曲ですが、Aメロの
ご機嫌な蝶になって
きらめく風に乗って
今すぐに君に会いに行こう
>リフ
曖昧な言葉って
以外に便利だって
叫んでる ヒットソング聴きながら
>リフ
Butter-Fly/和田光司
の「>リフ」のところで、それまで2、4拍目で鳴っていたスネアの音が、3拍目にズレています。こうすることで、テンポは変わっていなくても(演奏だとちょっと変わってるけど汗)、曲の疾走感を演出できます。
ということを頭に入れて、ぜひどうぞ。
休符を演奏する
「休符も演奏」というのは、何か頑張ってフレーズを弾きたいと願っている方にとっては、衝撃的な発見だと思います。
でも実際に、何かすごいテクニックを発揮しなくても、休符を効果的に取り入れることで楽曲がいい感じに仕上がることはいくらでもあります。
また動画を貼ります。大好きなサザンオールスターズの『タバコ・ロードにセクシーばあちゃん』という曲のカヴァーです。
特に凝ったこともせず、淡々と演奏を続けているんですが、2番のAメロの途中にサラッと休符をひとつ入れています。これが、ちょっと飽きてきたリスナーを引き止めるのに、一役買ってくれるのです。
休符の位置は1分40秒〜2分のあたりですが、時間がある方は冒頭から聴き通していただけると、効果のほどが分かると思います。
まとめ〜新しい視点で素敵な音楽と出会い直そう〜
最後まで読んでいただいてありがとうございました。長々と書いてきましたが、お伝えしたいメッセージは、「高い音と低い音を整理整頓して並べよう」です。
正直言って、この記事を読んだだけでスイスイ楽曲のアレンジができる人は、ほとんどいないと思います。
けれど、もしこの記事を読んで「私は楽曲のアレンジをするのだ!」というスイッチが入ったら、ぜひその視点でこれまで好きだった曲を聴き返してみてください。
あなたが「気持ちいい!」「最高!」と感じていたセクションがそのように感じられたのは、楽曲がそのように仕組まれて作られていたからだ、という発見を、たくさんしてほしいです。
「だからだ!」という発見と感動。これをたくさん積み重ねていくと、そのうちあなたの中から、こんな考えが出てきます。「この曲、こうしたらいい感じになるんじゃね?」と。”勝手”に。
それはきっと、あなたと音楽の新しい接点になるはずです。あなたに感動の発見と、楽しい時間が山ほど訪れることを願っています。ありがとうございました。