こんにちは。S&Yギター弾き語り教室の山本優作です。
この記事では、これからアコースティックギターを初めて買う、という方向けに、アコギの選び方のポイントについて解説してきます。
なお、この記事では、アコースティックギターの中でもスチール弦のもの…慣習的に「フォークギター」と呼ばれるギターの新品を、リアルな店舗で購入する、という前提で進めていきます。
新品のギターをお勧めするのは単純に、中古ギター選びは難しいから、です。
中古のいい楽器を安く仕入れる、という発想はギターの世界にもあるけれど、それはギターの良し悪しの基準や、自分が求めているサウンドの理解、ブランドやギターコンディションに関する知識がそれなりにないと、判断できません。完全初心者がいい中古ギターを選ぶのは相当難易度が高いので、今回は見送りです。
また、リアルの店舗をお勧めするのは、ネット通販だと、どんなコンディションのギターが届くか分からない、というリスクがあるからです。
例えば、運搬途中のトラブルでネックがちょっと曲がっていても、初めて持つギターだと、それが異常だと気づけない。リアル店舗なら店員さんが全ての商品をチェックしていて、触れたものを買って帰ることができるので、そういったリスクは最小限に抑えられます。
そういったところを鑑みて、今回の記事では「リアル店舗で新品のギターを買う」という前提でお話しします。それでは、どうぞ。
初めてのギター選び、5つの基準
初めてのギター選びの時には、以下の項目を参考にしてみてください。
①弦高
②ボディサイズ
③見た目
④価格
⑤サポート体制
一つずつ解説していきますね。
弦高:12フレット付近で3mm以下のものにしよう
弦高というのは、張られている弦が指板からどれくらい離れているのか、ということです。
ギターは指板に埋め込まれたフレットと呼ばれる金属のパーツに指で弦を押し付けることで音程を定める楽器なのですが、弦が指板から離れれば離れるほど、弦を指板に押し付けにくくなります。
弦高の高いギターは、弾いていてもきれいな音がでないし、音程が狂いやすくなったり、指がヘトヘトに疲れたりするので、いいことない。マジで一個もいいことない。
実は僕の始めてのギターは新しく買ったものじゃなくて、実家の押入れにあった、昔父親が弾いていたギターでした。当然メンテナスもされずに放置されていたので、ギターのネックパーツが曲がって弦高がめっちゃ高くなっていた。なので初めて自分でギターを買った時は、ギターってこんなに弾きやすいのかと感動しました。
逆にいうと、それまでは持っていたギターの弾きにくさのせいで演奏できない楽曲もあって、悔しい思いもしていたんです。楽しく腕前を上げるためにはたくさんの「できた!」という成功体験が必要なので、そういう意味でも、最初から弦高が低くて弾きやすいギターを選ぶことをお勧めします。
じゃあどれくらいの弦高のギターがいいのかというと、12フレットの辺りでだいたい3mm以下、というのを基準にすればいいと思います。楽器屋で試奏させてもらう時に定規を持って行って測ればすぐ分かります。
もちろん「このギターの弦高は高いのか低いのか」を店員さんに聞いてみるのもアリ。
ちなみに、楽器屋に置いているギターは弦を緩めた状態で並べられているので、必ず店員さんにチューニングをしてもらってから測ったり、弾いてみたりしてみてくださいね。
ちなみに、お店によってはギターを買う時に「弦高を目一杯下げてください」とお願いすれば、調整してくれるところもあるので、気持ちに余裕があれば言ってみましょう。
ボディサイズ:おすすめは小ぶりな「フォークタイプ」
アコースティックギターには、大きく「ドレッドノート」と「フォークタイプ」という2種類の形状があります。
ドレッドノートですが、これはマーチンというギターメーカーが作った形状のギターです。くびれが少なく、でっぷりとしていて、迫力のあるサウンドが特徴です。
次にフォークタイプは、ドレッドノートと比べるとやや小ぶりで、くびれがはっきりしています。
厳密に言うと似た形状の中にも「OO(ダブルオー)」や「OOO(トリプルオー)」なんて呼ばれる形状があるんだけど、初めてのギターでそこまでこだわる意味はないので、今回は一括りに「フォークタイプ」と表現しています。
先述の通り、フォークタイプは小さくてくびれが深いので、単純に「持ちやすい」という利点があります。「持ちやすい」は「弾きやすい」です。特に日本人は体の大きさの関係から、よっぽど見た目の好みがない限り、フォークタイプのギターを選ぶのが無難。ちなみに、音の特徴は、軽やかで繊細なことです。
ドレッドノートとフォークタイプ、音に違いはあるけれど、どちらを選んでも大勢に影響はないので、まずは持ちやすく弾きやすいフォークタイプがおすすめです。
見た目:見たり持ったりするだけで気持ちがアガるものを買おう
ここまでの話しを台無しにしちゃうかもしれないんだけれど、それくらい見た目って大事です。だってギターって、一生でそんなに何本も買うものじゃないもの。特に最初の一本とは、ギターを続けさえすれば、そこそこ長い付き合いになるものです。
ちょっと深堀り話しなんですけど、人って「できないこと」に取り組むことが、基本的にめっちゃ嫌いなんですよ。ギターを始めて最初のうちはテンションが上がって取り組めても、少しずつギターが日常に馴染んでくると、なんでこんな面倒くさいことをしなきゃいけないんだろう、っていう気持ちが出てきちゃう。
だから「視界に入るだけでテンションが上がる」とか「持って構えた自分にテンションが上がる」ということが、超大事。ギターなんか続ければ上手くなるんだから、最初の一本に求められるのは「持ちたくなる」ことだけである、と言い切ってもいいと思うのですよ。
だから、さっき「フォークサイズがおすすめ」とか言ったけど、もし見た目で惚れたギターがドレッドノートだったら、迷わずそっちを選んでね。
価格:気合いを入れるなら10万〜、それ以下なら3〜5万円クラス
ギターって、とにかく価格がピンキリすぎ。安いのだと9,800円でギター以外の道具も入った初心者入門セットなんてのもあるし、高いのだと数百万円から数千万、なんてのもあります。意味がわからん。
人によっても言うことが違います。僕も色んなギターオタクと出会ってきましたが、「貰い物のジャンクギターでも愛と手間隙でいい音を出せる」という人から、「30万以上のモノじゃないと使い物にならない」なんて豪語する人まで、いろいろでした。
で、それなりに高額なギター(30〜40万円クラス)も所持してきた僕としては、最初のギターはまず3〜5万円くらいのものがいいんじゃないかな、と思っています。
根拠は、2万円以下のいわゆる格安ギターは、作りが甘くて弦高が高かったり、弦を巻きつけるペグが安物で壊れやすかったりすることが多いから。それがギターをやめるきっかけになることもあるのよね。よっぽど予算がなくて、それでもすぐに始めたい場合じゃない限り、安物ギターはおすすめできません。
3〜5万円クラスになると、そういった「格安」の領域からは脱却できます。ギターの入門用として、めっちゃ良くはないけど悪くもないモデルが多いのもその価格帯なので、店員さんと話しながら、いろいろ弾いてみるといいですよ。
で、予算を潤沢に取れる人は、10万円以上のモデルで検討してみてください。格安ギターによくあるトラブルはほぼ回避できるし、腕が上がるほどサウンドで応えてくれます。最初にたくさん投資することで、その後の継続モチベーションの維持も期待できますね。
サポート体制:ギターのメンテナンスを任せられる店で買えるといいよね
ギターという楽器は実はかなりデリケートで、保管に気を遣う楽器です。湿度の管理や弦の張りなどを日々調整しておかないと、間違いなくネックが反ります。ネックが反ると弦高が高くなって、どんどん弾きにくくなります。
また、長くギターを弾いていると、弦を巻くためのペグが壊れたり、フレットが削れたり、何かとトラブルが起こるものです。
が、正直初心者さんがギターの保管のために加湿器や湿度計を買って管理をしたり、毎晩弦を緩めたりするのって、難しいと思うんです。まして、反ったネックの調整なんかは、最悪ギターが壊れちゃうこともあるので、少なくとも素敵なギターの基準が分かるまではやめた方がいい。
となると、誰かにメンテナンスをしてもらえる環境を用意しておくことが重要になってきます。理想は、ギターを買ったお店でメンテナンスをお願いすることです。担当の人が決まれば、ギターを買う時からいろいろ事情を分かってくれているので、気楽にお願いできますね。
あ、ちなみに、弦の張り替えはYouTubeに動画がいっぱいあるから、それを見ながら自分でできるようになろうね。昔楽器屋で働いてた友人が、弦が切れる度に張り替えてくれってギターを持ってくるお客さんがいるんだけど、正直しんどいって言ってたので(笑)
チューニングと弦の張り替えは、ギターとのお付き合いの基本。それ以外のメンテナンスをお願いできるお店を、自分の中でキープしておきましょう。
最初のギター選びは悩む意味なし
いかがだったでしょうか。一通り読んでいただいて気付いたかもしれませんが、今回の記事ではギブソンがいいとか、マーティンがいいとか、そういうブランドに関するお話しはしませんでした。
理由は簡単で、ブランドってギターのことを分かってきてからの趣味の世界。ただでさえ嗜好品であるギターの、さらに嗜好的な領域の話しになるからです。
一応僕も、ギブソンはどうとか、マーティンはどうとか、言えるよ?(笑)だけどそんなことは、ギターを弾き続けて、お店やライブハウスに通い続けていれば、自ずと分かってくる。むしろ、そうやって音楽の世界に触れ続けることが、冒頭から繰り返している基準作りの最速のパターンなんです。
全部理解してから始めようとするのは悪手。そういうアプローチだと、いつまで経ってもギターが弾ける未来がやってきません。勉強は最低限にして、とにかく手を出して始めるのが、結果的に理解することへの最短ルートです。
まずはお近くの楽器屋さんに行って、店員さんを捕まえて、「ぺーぺーなんですけど、ギター探しているので、相談に乗ってほしい」と声をかけてみましょうね。何なら予算を伝えて、提示されたものの中から好みのモデルを選ぶ、という感じでも全然大丈夫です。
それでは、今回の記事はここまでです。読んでくださってありがとうございました。