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踊る男

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冷たい夜に腰掛けて友人と出会う。彼は生涯の友であり、克服すべき難敵である。自由なはずの世界に現実を持ち込み、僕が居なくとも大きく膨れ上がった街と、僕が居なくとも揺らめいていくであろう人の影を突き付けてこう言うのだ。

「見ろ、この世に必要なお前など居ない。」

「見ろ、この街にお前の居場所はない。」

「見ろ、この空にお前の歌は要らない。」

いつも僕は悲しくなって、その友人にこの身体と心を明け渡してしまう。友人はこの身体と心を使って、小さくか弱い顔をして、

「だから、こうしていなさい。」

と優しく語り掛けてくる。

僕は彼に幾度救われただろう。渋谷の束なった刃物のような雑音から、梅田の溢して気付かないまま乾かしてしまったコーラのようなまどろみから。そして今また、夜を吸ってすっかり冷えてしまったタイルに腰掛ける僕を、彼は優しく救おうというのだ。

「震えていなさい。そしたらいつか朝が来て、僕らを押し流してくれるだろう。」

果たして、僕はその申し出を生まれて初めて断ったのだ。ついさっき踊る男を見たからだ。彼は真っ暗な一月の、始発を待つ駅前に立ちはだかる真っ暗なガラスの前で、僕が尻を冷やしているこのタイルの上で、音と動きの世界に居たのだ。

僕にはそれが、この夜に在るどんなものよりも眩しく見えた。ただ独り踊る男を、心から尊敬したのだった。

友人の手を振り払いながら、僕は最後のありがとうを言う。さようなら、小さくか弱い友よ。君はいつも矢面に立ち、僕を屈強で絶対な何者かきら守ろうとしてくれたのだ。それは間違いなく僕を守り、それにより僕は今日を生きているのだろう。

だけども、お別れなのだ。僕は踊らねばならない。あの男がそうしていたように、この夜を受け止め、僕の観る世界の王であることを思い出さなければならない。

何もかも上手くいくだろう。何もかも上手くいかないだろう。しかし、それらは全て僕のものだ。僕の世界で起こる全てを、僕は受け止めることを決めたのだ。君になすりつけていた痛みと孤独も、それは僕のものなのだ。

さようなら、愛しい友よ。

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