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孫はみんな悪いやつ
母方の祖父母の仕事場に寄ると、たいていはチューペットが貰えたのだけど、ごく稀にちょっと特別なドリンクが出てくることがあった。子どもが飲んではいけない、頑張る大人のための飲み物。ファイト一発な鷲のマーク。そう、リポビタンDである。
田舎の年寄りの家にはなぜか常備されていると言われるリポDは、例に漏れず祖父母の仕事場の冷蔵庫にも常備されていた。もちろん僕の家の冷蔵庫にもにもあったのだけれど、そちらは父方の祖母による厳重な在庫管理がなされていたから、ちょいと一本ちょろまかす、なんてことは、とてもじゃないけれど出来なかったのだ。
当然母方の祖父母も、栄養ドリンクは子どもに飲ませない方がいい、といこうとは承知していたのだけど、長期に渡る僕のお孫様要求を拒み続けること叶わず
「一口だけやで」
と言ったが最後、大喜びした孫スマイルの追い討ちもあって、それはそれは見事に陥落した。
しみわたる罪の味
この連載の序盤で行くことを禁止されていた河原にコソコソ遊びに行っていた話しをしたけれど、子どもにとって親が決めた禁止事項ほど魅力的なコンテンツはない。日常の風景から消し去ってしまえるものなら問題なかろうが、ことリポDなどはテレビを点ければCMをやっているし、冷蔵庫の扉を開ければそこにある。まして大人は毎日当たり前のように飲んでいるではないか。目に見えて手が届くのに、それを自分の意思で断ち続けることなど、人類には不可能である。
おちばーちゃん(母方の祖母)は薄い緑色の小さな冷蔵庫を開けるとリポDを一本取り出して、蓋を開けてから中身を2/3ほど飲み、
「こんだけやで。お母ちゃんには黙っといてよ」
と笑いながら、手に持ったビンを僕に渡した。丸々一本でなかったことは少し残念だったけれど、それでも僕は尻尾を振って、残りわずかなリポDをぐいっと口に含んだ。ビタミン系栄養ドリンク独特のぴりりとした風味や、ほとばしるような甘み、ほんのちょっとのアルコールの存在感、缶ジュースにはない重厚なビンの口当たりが、僕の乾いた好奇心と味覚回路に一気に染み渡った。
「めっちゃおいしい!」
おちばーちゃんは実に嬉しそうな顔をして、「お母ちゃんには黙っといてよ」と何度も言った。僕は約束を守って、そのことは誰にも言わなかった。。。あ、おちばーちゃんごめん、このブログかーちゃんもたまに読んでるんだ。書いちゃった。
「あれよぉ、そうけぇ」
なんて和歌山弁で、やっぱり嬉しそうにおちばーちゃんは、黄色いコンテナに座って笑っているのだった。
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