男の子のランチと言えばカレーかハンバーグと相場が決まっているが、個人的には回転寿司を推したい。
それも一皿100円の寿司ではなく、皿の色によって値段が変動する少し高価なものがいい。
子供の頃、特に学生の頃などは、とにかくたくさん食べることが偉いことだと思っていた。
しかし大人になり人間として熟成していく中で、それが勘違いであることに気付いた。
あまりものが食べられなくなってきたのだ。
おそらく、ひとつひとつの動作から無駄な動きがなくなってきたのだろう。
今だに「ちょろちょろ動き回るな」と叱られることがあるが、無駄なくちょろちょろ動き回れるようになったのだ。
このまま熟成を重ねれば、十数年後には滑るようにちょろちょろと動き回れるようになるだろう。
食べられる量が減ったのだから、質の良いものを少量味わって食べることが望ましい。
カレーやハンバーグは美味しいが、量がコントロールできない。
加えて回転寿司であれば、自制心次第で必要な費用をもコントロールできる。
自制心が無いことを除けば、これほど理にかなったランチは他にない。
先日、両親と和歌山のイオンにある回転寿司に入った時のことだ。
支払いは両親が持ってくれるということで、久し振りに腹いっぱいに食べようと気持ちを引き締めた。
しかし、引き締めたのがよくなかったのか、4~5皿ほどを食べたところで満腹感を感じた。
僕は一度腹の中をリセットするために、トイレに立った。
レーンと壁の間を歩いていくと、店の一番奥に当たる部分にトイレがあった。
厨房からの出入り口がすぐ隣にあるから、味噌汁やうどんをお盆に乗せた店員が絶えず出入りしている。
非礼を詫びる素振りもみせずに
「失礼いたしますー」
と通りすがる店員をかわしながら、もし僕がのっぴきならない状況であったら、この寿司屋は未曾有のバイオハザードに襲われているところであると心の中で強く忠告した。
無事に辿り着いたトイレは、イオン自体が最近出来た建物であるから、大変に美しかった。
ノブはシャンパンゴールドを少しくすませたような上品な輝きに満ちて、手に握ってもカタカタと遊ぶ部分が存在しない。
洗面台が扉の外側にあるから、用を済ませた人が個室を出てきたらすぐさまに待っている人と交代できる仕様だ。
扉は重くもなく、軽過ぎることもなく、空気を掻き分ける心地よい負荷だけを残して、音もなく開いた。
あらゆるポイントで僕の期待を良い意味で越えてくる。
トイレが汚い飲食店の繁盛などあり得ない。
安らかな満足感に、胃袋にも若干の余裕が感じられるようになってきた。
僕はここで一度お腹をリセットし、改めて美味しい寿司を詰め込めるだけ詰め込むのだ。
夢のような満腹感を想像して扉を開けると、三畳はあろうかというスペースを使った広い個室の奥に白髪混じりのばーさんがいた。
ばーさんはカットしたトイレットペーパーを両手でしかっと握り、頭を垂れて祈るような姿勢で事に挑んでいた。
僕は音も無く開いた扉を音も無く閉じ、なんとなく洗面所で手を洗って席に戻った。
途中、この人もトイレに行くのかと思しき婦人とすれ違ったが、ばーさんのことを教える元気はなかった。
この後僕の食欲は決定的な減退を見せ、結局のところ全部で7皿ほどを食べたところで力尽きた。
全盛期には軽く15.6皿は食べていたから、およそ半分以下の食事量である。
「もうええの?」
と聞く母に事の詳細を語ることもできず、ただただやつれた笑顔を向けていると、通路を挟んで隣の席のテーブルに山積みにされた皿が目に入った。
皿の向こうで、どこかで見た事のある白髪混じりの頭が揺れていた。
Information
山本優作ワンマンライブ〜Stand & Fight〜
■会場
bar yay a ebisu
東京都渋谷区恵比寿1-12-7三恵ビル3階
2014年9月14日(日)
19:00 open
19:30 start
21:30 end
■ゲスト出演
柴田ヒロキ(Vo.Gt)
予約3000円/当日3500円
※どちらも1ドリンクついてます。
※お客様は15名限定とさせて頂きます。
■ご予約は
accr.mail@gmail.com
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