マンガ、ドラゴンボールの中にスカウタ—という有名なアイテムが登場する。方眼の眼鏡のようなこのアイテムは、装着して敵を見るとその敵の戦闘力が数値化されるというものである。
このスカウタ—の登場で、それまで「大きな気」というぼんやりとした表現であった強さという概念に、明確な序列と成長が生まれた。そしてそれは、その後のSF格闘マンガに形を変えて世襲されてゆき、強さの大インフレ時代を築いてゆくことになる。
このスカウタ—という革命的なアイテムには、いくつかの謎があった。今回はその謎に対して、誰にも頼まれていないけれど切り込んでゆくことにする。
謎その①:なぜ爆発するのか
このスカウタ—というアイテムは相手の戦闘力が計測できる範囲を越えると「ボンッ」という音を立て煙を吐いて小爆発を起こし粉々に砕け散るという不具合を抱えていた。ちょうど、iPhoneが爆発するようなものである。装着している連中が戦闘員であるとはいえ、耳や眼球近辺に装着するアイテムがそれでは、あまりに危険すぎる。
そもそもスカウタ—は計測器である。相手の戦闘能力が表示できる範疇を越えたのなら、素直に「計測できないかんね」と表示してくれればいいのだ。ただでさえ的の戦闘力が甚大であることをピピピピピッなどとけたたましい音を出しながら知らせているのに、それ以上装着者の不安を煽ってどうしようというのか。
もしかしたらスカウタ—はデジタルではなく、圧倒的に小型化されたアナログなマシンであるのかもしれない。本体部分に敵の強さを感じ取って暴れ出すようなアメーバ状の生物を閉じ込め、そこから感知される圧力を小さなデジタル部分で数値化し、グラス部分に表示するのである。
スカウタ—は侵略戦争を繰り返しているフリーザ一味のアイテムであったから、これを通信式にしてしまうとエリア対応などに大変なコストが掛かってしまう。個々のスカウタ—で戦闘力の計測ができるというのは重要なポイントであったのだろう。だからって爆発することが許せるかというと、そんなことはないけど。
あぶない。
謎その②:どうやってくっついているのか
スカウタ—には眼鏡のようなフック式のパーツが見られない。なにかヘッドホンの耳当てのようなものが見えるだけで、どうやって装着されているのかが全く解説されていないのである。
それでいて、人間やフリーザ様をはじめ、様々な形状の登場人物達が何に困るでもなくこれを装着し、活用していた。一体どういうことなんであろう。
最も可能性として有力なのは、この耳当てになっている部分がセットされると中の空気を抜き、気圧を下げてへばりつく、というものだろう。
しかし、戦闘中に外れてしまわないような強さでへばりつくというのは、相当な強さである。そんなものに鼓膜が耐えられるのだろうか。装着する種族によっては、鼓膜よりも奥のもうちょっと大事な何かが出てきちゃったりするかもしれない。ドラゴンボールZのZは絶句のZ。そんなん嫌や。
謎その③:誰が作っているのか
フリーザ編の中盤で、ギニュー特選隊と呼ばれる連中が新型のスカウタ—をナメック星に届けるというシーンがある。当時フリーザ達と戦闘関係にあったベジータやクリリン達の戦闘力が想定よりも高かったため、
「あかんわこれ壊れてるわ」
というお気楽極まりない判断を下したのだ。「俺の壊れてるわ」「俺のも壊れてるわ」「あ、じゃあ俺のも壊れてるわ」とか。小学生かお前ら。
ともあれこのシーンで、スカウタ—の新型を開発している連中がいる、ということがハッキリする。そしてわざわざ戦闘員に持って寄越すくらいであるから、その開発部の連中は侵略用の宇宙船には乗り込んでいないことが分かる。
おそらく、過去侵略してきた星の住人達の中にこういうことが得意な種族が居たのだろう。その星が拠点になっているのか、母船に連れ込んで働かせているのか。そう考えると、スカウタ—が爆発する使用であるのは、彼らのせめてもの抵抗であるのではないかという気がしてくる。
まとめ
このようにスカウタ—には様々な謎がある。だから何だと言われると返す言葉は無いのだが、こういった小さな謎にフォーカスを当ててゆくことで、作中で語られていないキャラクター達の背景が見て取れるから楽しいものだ。
みなさまも普段何気なく受け入れているマンガやアニメの設定やアイテムを、ちょっと深読みしてみてはいかがだろうか。時間だけが無駄に過ぎてゆくことは、僕が保証する。